担当脚本回がさほど多くないせい、というのもあるだろうけど、『相棒』におけるオールマイティ脚本家・徳永富彦の脚本回。
『相棒』における犯人当ての場合、多くの回は「こういう状況を分析していくと、その人が犯人としか考えられない」という、証拠・証言・何気ない一言などパズルのピースを組み合わせて辿り着く形式になっている。
『金田一少年』とか『名探偵コナン』みたいな「トリック殺人を解き明かす!」というのは、珍しい印象があるくらい。
徳永脚本回では、トリック殺人というか、犯行において犯人が悪意的・作為的な処理を施している、というケースが多い気がする。
そして、Season7以降に『相棒』に登板してきた人材なので、亀ちゃん時代の感覚が馴染んでしまっている他の脚本家より神戸尊の作中の扱いが巧い気もする。
「今シーズン、神戸クンの存在意義が薄い」などと思っていたところ、今話はそれを払拭してくれるような話になった。
東大時代の旧友・加藤からの依頼を受けて研究所の不正帳簿についての捜査を単独で始める右京。同じ頃、尊は加藤の娘・美咲からの電話で「父は人を殺したのでしょうか?」との話を聞き、加藤の妻の不審死・研究所職員の自殺に関して加藤の容疑を調べるため研究所に単身赴くが、加藤を庇う右京に対し尊は不満を募らせ…という内容。
同じ研究所に関連した二つの事件を全く違う二方向から攻めて、捜査していた双方が激突する、という内容が面白い。
あんまりにも対立しすぎて途中二人の間に起こる出来事は、普段のキャラ付け見てるとありえない展開であることが分かってしまうので、オチが分かりやすいのが難点かもしれない。
ただ、最後のシーンの「強く殴りすぎですよ」「なぜだが力が入ってしまいました(笑)」というやりとりを見ると、元鞘に収まったように見える二人に火種がまだ残っているような感じもして、双方がべったりになりすぎないコンビ=“対立軸あってこそのバディムービー”というレベルを保とうとしているようにも見えるなぁ~
ある意味、右京の豹変ぶりが愉快だったSeason9の「招かれざる客」に近い匂いも感じる。
右京所縁の人物が登場、しかもこの人も結構な変人ということで、右京のキャラクターに厚みが増したのも好みの展開だ。
もう少しゲストキャラのキャラ付けが濃かったり途中の展開が違っていたら、レギュラー入りしてても良さそう。
最後に、真犯人を逮捕するためだけに出てきた(そのシーンだけの出演になった)ことに捜一トリオが愚痴るのは、なんかメタフィクション的な感じがあるなぁ(笑)
ちなみに今話のサブタイトル…シャーロック・ホームズの「緋色の研究」のパロ?