録画してあったのと合わせて視聴。
『アマルフィ』も『容疑者Xの献身』も、監督は同じ西谷弘で、音楽・撮影・編集などの主要メンバーも被ってるんだけど、仕上がりの印象はだいぶ違う。扱う題材とジャンルが違うんだから、当然といえば当然ですけんど…
…こう、迷作と佳作という印象の違いが(笑)
『アマルフィ 女神の報酬』
原作は『ホワイトアウト』、『ドラえもん のび太の新魔界大冒険-7人の魔法使い-』(脚本)の真保裕一。
一応脚本も本人のはずなんだけど、現場で相当勝手な改変があって、スタッフロールに脚本家不在となったという、いわく付きの作品。
そして作品の立ち上げ自体も、主演の織田裕二が『踊る大捜査線 THE MOVIE3』のオファーがあった際「『踊る3』に出てもいいけど、他にも主演作品が一本欲しい」と言ったことが事の発端だという「それってどないやん」と言いたくなる噂がある、いわく付きのもの。
そのせいか、シナリオの至る所に変な部分が噴き出していて、ボーッと見ていても気になるほど。
それが顕著なのが、この映画のタイトルがイタリアの観光の名所である『アマルフィ』を冠していて、話の中盤で主人公たちが誘拐事件の犯人の手がかりを掴むためアマルフィに向かうという流れがあるのに、アマルフィでは話の大筋に関わるようなことは何も起こらず、20分ぐらいしか描写されずにすぐに舞台がローマに移って、アマルフィまで行った意味がほとんどないというところ(汗)
イタリアに降り立ち車でローマに入っていく主人公の様子を映している途中で唐突に暗転ショットに切り替えてメインタイトルを映したり、犯人たちが最終目標まであと一歩という段階で衣装替えをする際に着替え最中なんだか着替え終わったんだか微妙なタイミングでスローモーションになってサラ・ブライトマンの歌が始まったり、演出や編集でも首を傾げたくなるところが多々…
『容疑者Xの献身』
原作は『秘密』『手紙』『名探偵の掟』の東野圭吾で、タイトルには一文字も入ってないけど『ガリレオ』シリーズの映画化。
『ガリレオ』は結構人気あったと思うんだけど、そのタイトルネームバリューを直接使わずに、まったく別タイトルで映画を立ち上げているのは珍しいなぁ
TVシリーズは、オカルトめいた事件の裏に科学を用いた奇想天外なトリックがあることを天才・湯川学が解き明かしていくところに面白みがあったのだけど、この映画は、科学的なトリックは無し、湯川が華麗に謎を解いていくこともない、TVシリーズのコンセプトをほとんど使用しない異色の構成。
殺人を犯してしまったとある母子と、その隠蔽に協力する天才数学者・石神の行動を追っていく、推理モノならば倒叙型に分類されるものだろうが、計算づくですべての先を行ってしまう石神の目論見が果たして“成功”するのか、という立ち位置にすらなっているので、ここもかなり異質だとは思う。
途中で、タイトルにある“献身”とは言いがたい暴走を見せる石神を見て「結局そういう方向に堕ちていくのね」という思いに駆られてラストを想像したし、話の流れを追ってよくよく考えてみると大掛かりなトリックがありそうにもないので、このまま人物相関のドラマでラストまで押していくのかな、と思いきや、終盤にその予想を裏切られることになって、そこら辺が「おおっ!」と。(書きかけ)