冒頭で「10月だっていうのに暑いな…」というセリフがあったので「プププ。現実ではもう木枯らし一号は吹いてる季節ですけどね」などとチャチャを入れた感想を書いてやろうと思ったけど、今回の話のテーマにがっつり絡んでくる重要な要素だったので、チャチャを入れる気になれない程、重い…
『相棒』の制作側はこれでイケると思っているのだろうか…?
いや、もちろん期待の櫻井武晴脚本、個人的にはとても楽しめたのだけれど、テーマが社会派でずっしり重すぎて、新規視聴者含めこれからグイグイ興味を持たしていかなきゃいけない放送第2回目で、見るのがしんどい程のネタを出してくると、離れる人もいるんじゃなかろうか、と思うもので。
まぁ、いないと思ってるから、この戦略なのだろう、テレ朝・東映的には。私もそこまで思ってないけど(^^;)
5年前人を死なせた青年が出所後殺害されたところから始まるストーリー。
完全なる自分の身勝手で人を死なせたのに刑事裁判では不当な判決、民事裁判で賠償請求して勝訴しても被告に逃げられたら取れず終い、被告は殺されその親の片方は死にもう片方も姿をくらませて打つ手なしで、まったく無念が晴れずに精神的に疲労しまくりの被害者遺族…
息子は勝手な理由で人を殺すし反省の色もない、マスコミの取材は辛くテレビのインタビューでは近所の人々が冷淡な意見を吐く、嫁いだ娘のところにもマスコミの取材が押し寄せ幸せそうじゃない、挙句妻は心労で死んだ、次は自分かもしれないと辛い加害者家族…
ああ、いつもの櫻井脚本ですね(^^)
被害者遺族の無念を大上段に掲げて事件の真相は二の次の話になってるあたりSeason3の「ありふれた殺人」と被るものがあるけど、今回はそこに加害者家族の苦悩の話も追加。
「ありふれた殺人」みたいに、見方によっては心が晴れる部分があるようラストにはなっていなくて、今回は双方に救いがないラストが待っている。あと、ある意味神戸にもな。
Season9の「ボーダーライン」みたいな感じになったなぁ…
弁護士役で登場した渡哲也には、制作側が華を持たせてる印象があった。
被害者遺族のためを思って行動するなど、ところどころ主役級の扱いや役割の振りがあって、右京とのダブル主人公みたいな要素が…。って、神戸君の立場がない(^^;)
事件の真相自体には全く関係ないものの、「逃げ水」というテーマの使い方が素晴らしい。
被害者遺族にとっては、謝罪のための賠償をしてもらえずに逃げられ、探しても見つからない犯人やその家族、そして、その犯人に求める謝罪…
加害者家族にとっては、事件を起こした犯人の家族というレッテルと奇異の目の追跡から逃れた生活、そして、犯罪を犯した当人が行う贖罪…
そんなテーマを、今回殺される犯人の青年が殺される直前、しかも償いの行動を誤魔化そうと計画してる最中に、遠い昔の懐かしく微笑ましい記憶のキーワードとして語らせるとは、何という皮肉を利かせた演出!
最後、神戸が右京に尋ねた問いとその答え…
「なぜ身内が犯人だとわざわざ告げたんです?」―「すぐに分かることですから、犯人を突き止め自首をさせた僕が伝えるべきです」―「残酷だとは思わないんですか?」―「それに耐えられないなら、人に罪を問うべきではない。僕はそう思っています。」
右京の答えはSeason1の「下着泥棒と生きていた死体」の頃から、変わらない信念のように思える。
その答えもまた、神戸にとっては理解するには遠い「逃げ水」のようなもの……というのを、遠くに逃げ水が見える道を一人先行く右京を見る視点ショットで表現する演出が憎い。
…そのラストショット、蜃気楼の逃げ水が映ってるんじゃなくて、本当に水撒いて逃げ水のように見せかけてません?(^v^;)