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Take@管理人が、知ったかぶりのテレビ番組批評やとりとめもなく面白くもない日記などを書く、オタク臭さ全開のくどい不定期更新ページ(泣)
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 昨年末の『大奥』を筆頭に、邦画界初のキムタク効果に注目したい『HERO』、異色の月9大ヒットドラマの延長『西遊記』など、一体何の勝算があってか、フジテレビの人気ドラマの続編的映画化が相次ぐ今年…
 しかし、それらのビッグタイトルと比べると、いかんせんマイナー感が漂うドラマの劇場版がなぜか公開されます。

 その名は『アンフェア the movie』
 http://unfair-movie.jp/

 私はこのドラマ一回も通して観た事はないのだけれど、いやぁ~でもねぇ、このドラマの概要を聞いたときから何か魅力を感じていてねぇ
 最近テレビ朝日以外ではとんと見なくなった刑事ドラマを正面切ってやるって時点で興味沸いたし、巨大な謎を追っていくという今時アニメでしかやらないようなハードな設定がいろいろと仕込まれているのは、事件主導ストーリー大好きな私のハートがくすぐられた。
 映画化するほどの人気とは露ほども知らなかったが、それでも横目見ながらも興味があったドラマの映画化。期待せずにはいられない。
 
 刑事ドラマの映画化、異色の作品ということで、これがポスト『踊る』にならないかなぁ、とまで思うまでになってましたよ。
 …今日の昼の特番を見る前までは。

 映画版のワンシーンが流れたんですが、これが撮り方がてんでダメ。

拍手


 例えば、テロリストの占拠する病院内を、敵に見つからないように身をかがめて主人公が移動するシーン。
 ここは「見つかるかもしれない」あるいは「敵に囲まれて息も詰まる空間」という緊張感を演出しなければならないのだから、頭を低くして移動する主人公の目線と同じ高さ(つまり、ローポジション)から撮影する方が効果的なのに、普通につっ立てる人間の目の高さから見下ろす形で撮っているのだから、イマイチノれない。

 愛娘の乗る車が爆発するシーンもそう。「これぞ劇場版!」という異常事態の開始合図なのだから(その上、映画のストーリー自体の重要な伏線でもあるし)、印象的に撮らねばならないはずなのに、爆発の瞬間を描かず、燃えさかる車を撮ることもそこそこに、倒れている娘まで「何となく下に転がってるなぁ」程度にしか撮っていないので、すべてがさらりと流された気がして、ちっとも印象的ではない。

 この二つのシーンを見せられただけで、がっかり。


 で、個人的に致命的だったのが、犯人が立てこもる病院の撮り方。
 映画の中心舞台なのであり、警察が手を出せず主人公が単身で乗り込むしかないという過酷な状況を生み出す「難攻不落の巨大要塞」に仕立て上げなければならなかったハズ。そうすることで、この病院をストーリーの拠点にする映画全体に緊張感が増し、映画への没入度が格段に変わることになる。
 なのに、占拠された病院に主人公が到着したときの実際の撮り方がどうも平板で、ただ遠巻きに病院をとっているだけ。
 どうせなら、下から煽って撮るべきだろう。


 …で、私は根っからの『踊る大捜査線』信者なので、ここで何の思慮もなく『踊る大捜査線 THE MOVIE』と比較するけれど、『踊る』はこういった箇所の“映画っぽさ”を演出するのが本当に巧かった。
 特に「巨大構造物」を利用しているところが私は大好きで、低予算ゆえに複数のセットが組めないので普通の建物や部屋をそのまま利用していた苦肉の策が、逆に功を奏している。

 テレビ局の大会議室を利用しただけの捜査本部、これまたどこぞの屋内を利用しただけの警視庁の大階段、クイーンズスクエアの休憩フロアに急遽作ったカフェセット、外観をそのまま映しただけの副総監の家と遊園地とラストの舞台となるありふれた集合団地…

 その巨大空間の中に大量のエキストラに混ぜて、主人公たちを放り込むことで、「映画空間としての広がり」が演出されて、観客のスクリーンへの期待感が効果的に煽られるわけだ。
 …と個人的には思う。

 それに『踊る』は、意図的かどうかは分からないけれど、色彩に凝っていて、明け方で“青薄暗い”アヴァンの風景や副総監宅、蛍光灯で照らされてる感がものすごい“青い”刑事課室内、明かりが抑えられ全体的に“黒い”捜査本部、ザ・パクリ・オブ・『羊たちの沈黙』の“青白い”地下倉庫、自然光で撮られ色彩が鮮明で“緑色”が印象的なオープンと昼間のセット、ラストの“白みの強い”病院内、といった風に、色合いがシーンごとにアクセントがついていて飽きない。

 それに、セットでは近距離撮影、オープンでは遠距離撮影、といった風にショットサイズを使い分けて、特にセットではショットを細かく割ることで、セットっぽさをうまく誤魔化していた。
 そこに『踊る』十八番の長回しも使うことで、空間的な拡がりを時折強調して“映画っぽさ”を印象付けている。
 こういうところが巧い!


 そんな工夫というか、偶発的な効果が『アンフェア the movie』には見られなかったんだよなぁ…

 …そうそう。
 それが最も顕著だった劇場版映画の存在を思い出した。

 『ナースのお仕事 ザ・ムービー』のことだ!

 ほとんどがセット撮影なのだけれど、ライティングに何の工夫もなくテレビの時とまったく同じで、明るく照らされたセットは作り物臭が嫌になるほど出ていて、平板すぎる画ヅラだったので、「何が劇場版やねんッ!」と憤慨した覚えが…
 『踊る』の二番煎じっぽいラストの被弾シーンと臨終シーンには唖然。カット割りからカメラ位置から、何から何まで本当にテレビレベルの演出で済ませている。ストーリーは劇場版らしく特別な感じなのに(…それでもまぁ、安易さが溢れる特別さだが)、演出が平板だから、映画ならではの特別な感動も何もあったんもんじゃない。

(…でもなぁ、セットっぽさがありありと出ていてこその『ナースのお仕事』、というのもまた事実。)


 『踊る』の殉職シーンが効いているのは、あのスロモ場面にすべてが収束するようストーリーを構成して、演出でその効果を高めているからなんだよな。
 『踊る』の伏線の張り方は、エンタメ映画として、本当に舌を巻かされる。
 「サラリーマン刑事」「企業的警察」「中枢と末端の軋轢」という『踊る大捜査線』の根幹テーマを描きながら、安易ともいえる死を前にして起こるヒューマンドラマを感動的に成立させるために、社会派テーマの中にトレンディドラマ的な伏線を忍ばせている、このさりげないしたたかさには唸らされる。

 このラストシーンに行き着くための、犯人の居場所が判明するシーンが特に重要。ここで転換点を効果的に演出しないと、その後の展開にうまくノれないので。
 青島が何かに気付いてブラインドの隙間を勢いよく広げるところから、必殺テーマ音楽の「Rhythm And Police」がかかるという、音楽面の演出がここでは効いていて、その途中で「『天国と地獄』だ…」と何気なくフッと呟くのが、エスプリ効いてていい感じなんだよなぁ~
(『踊る2』ではその辺の匙加減を間違えていて、「『砂の器』だ!」と気付いて呟くシーンから「R.A.P」が始まって、『砂の器』を重要な言葉のように見せちゃってたのが印象悪くしてる。)


 ストーリー面のことを述べるなら…
 『アンフェア the movie』は「テレビドラマの謎が全て解明する完結編」という謳い文句で広報しているけれど…
 この手法で成功した例ってのを、私は見たことがない。
 オタクには「エヴァ商法」として名高い、テレビシリーズの延長戦を高々と宣言するこのやり方って、「劇場版」を見たい人はともかく、「映画」を見たい人にとっては、話が分かりづらくなるっていう迷惑以外の何者でもないんだよね。
 これで『ケイゾク』の劇場版は見事に失敗してしまったワケですが。(…まぁ、『ケイゾク』を『ケイゾク』たらしめる要素をブチこむと、ああいう風にならざるを得ないわけだけれども。)

 『踊る大捜査線』がなぜヒットしたかというと、そうした難しい話関係なしに、事件主体だというところにあって、テレビシリーズから引き継いでいるお話(「秋の犯罪撲滅スペシャル」で発生した青島と室井の確執など)は、テレビシリーズの延長線上にある感情を引き継ぐという形ではなく、映画の基本設定として分かりやすく提示しているところが親切設計というか、巧いところ。
 ラストの感動に直結される伏線は、全てこの映画内で提示されていたものばかり。これが『踊る』が大ヒットした所以なんだなー。
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