今回も初日突撃してきました、『相棒』劇場版!
神戸尊@及川光博が劇場版としては本格的に初出演。
2年半前の第1作『相棒-劇場版- 絶体絶命!42.195km(東京ビッグシティマラソン)』は、TVシリーズに比べれば大きくド派手に展開される事件が「これぞ劇場版の迫力!」と感じさせてくれたものの、序盤の連続猟奇殺人事件・中盤のマラソン標的爆破テロ・終盤の逮捕後人情ドラマの流れに、お話の合理的な繋がり(行動の理由付け)が全然感じられなくて、「その動機でこの行動って、何やねん!?」と支離滅裂寸前だったのがとても残念だった…
そして全体的に雰囲気がとても重たくて、右京以外の登場人物のキャラ的な魅力がほとんど目立たなかったのも、登場人物同士の会話の掛け合いが重要なファクターの『相棒』では、残念だなぁ~と思える状態だった。
今回の『劇場版Ⅱ』は、そこらへんの残念さが解消されていて、事件の規模を理由付け不可・収拾不能なほどに拡大させることもなく、ところどころ行きすぎな行動が見られはするものの、ほとんどの行動の理由には筋が通っていて、とても平穏な気持ちで鑑賞することができた。
今劇場版の売り&前半のメインが「警視総監以下11人の幹部を人質に警視庁が占拠される」という、決して規模的が大きくなければ見栄えもそれほどでもない、映画予算的にもそれほどお値段が張る撮影でもないお話であるものの、国家権力を揺るがせる異常事態という、お話の性質的なところで危機感のデカさを煽っていて、不謹慎ながらカタストロフィにも似たワクワク感を覚えて、『相棒』らしい、効率のいい規模のデカさの演出ににんまりしてしまった。
また、脚本に輿水泰弘が入ったお陰か、メインのストーリーの合間合間に登場人物同士の掛け合いが適度に挟まれていて、キャラの面白味も十分感じられるような作りになっていたのも、見やすくて良かった。
最近の『相棒』ではおなじみの、櫻井武晴が延々と担当してきたテーマ、警察組織の腐敗・陰謀が今回の後半のメインシナリオになっているのも、TVシリーズの『相棒』を見るような感じに近い感覚で鑑賞することができてニヤニヤできた。
…それと同時に、「これ、映画にする意味あるのか?」「TVシリーズでもできてたスケールじゃん」ということを、前作と違って強く感じてしまったのだれど(汗)
今回の映画の売りは「前代未聞!警視庁が占拠される!」「相棒が国家に挑む!」「この映画で『相棒』の歴史が変わる!」というところなのだけど、前二つについてはTVシリーズでも経験済みであって、っていうか右京さんが国家権力に喧嘩ふっかけるのはいつものことじゃないか(笑)…というレベルのもの。
「警視庁占拠」は、総監・幹部こそいないけどSeason1第1話で泉谷しげるが亀ちゃん人質に警視総監室に立て篭もってるし、Season4最終話の「桜田門内の変」でも警視庁内部で凶悪犯罪が発生して庁舎が封鎖されているし。
てなわけで、TVシリーズからの視聴者にはさほどキャッチーなコピーではないのだけど、普段の『相棒』を見慣れていない人や、まだ『相棒』の性質をよく分かっていない人たちに分かりやすく見所を伝えるための売り文句なんだろうな、と思う。
逆に「『相棒』の歴史が変わる!」というところは、TVシリーズをがっつり見ている人ほど実感できるところ。
というか、この先の『相棒』が良い意味でも悪い意味でも不安になってくるレベルだったヨっ!
今回の映画は戸田山雅司と輿水泰弘の共同脚本なので、どこをどういう分担で書き分けてたのか分からないけれど、輿水泰弘が入ったお陰っぽいところが何箇所か…
篭城犯の様子を探るためとはいえ、神戸・米沢・陣川に碌すっぽ説明もせずにロープ一本で窓から降下して(そのロープを固定するのは、碌すっぽ説明を受けていない前述の3人である;笑)、コソコソするような様子を微塵も見せずに堂々と犯人の目の前に姿を現して写真をパチリと一枚だけ撮るとスルスルと上に戻っていく、人を食ったような行動を見せて、戻ってきたら戻ってきたで「無茶しすぎです!(ロープ持ってて、ぐらいは言ってから降りてください!)」と怒る3人に「篭城している部屋の窓ははめ殺しの防弾ガラスですし、威嚇射撃をする人間は得てして本気で人を撃つ意思がない、ということを計算した上での行動です」と(3人が求めたのとは筋違いな)説明を得意げに披露して、神戸に「また始まったよ…ッ(怒)」と悪態吐かれてるところなんか、右京の魅力満載で楽しい
頭脳派である右京が見せる意外かつ貴重なアクションシーンという意味でも、楽しい。
そして、いつぞや『うたばん』で「いつか吊るされたいと思っていて…」というコメントをしていた水谷豊を思い出すと、さらに楽しい(笑)
そうして、カメラで撮ってきた写真を捜査本部に提出する際…
右京「最後に一つだけ。先ほど提出したカメラはボクの私物ですので、後で返還いただけると幸いです」
中園参事官「ゴミ箱に捨てておいてやる。夢の島にでも探しに行けッ(怒)」(※夢の島=東京のゴミ最終処分場)
といった感じで、前作では不足していた“捜査本部からしっかり厄介者扱いされて「出て行け」宣告される特命コンビ”の姿が、滑稽なやり取りでもって補充されていて、最近本編でもあまり「出て行け」宣告されていないので、『相棒』初期の雰囲気があってなかなかに楽しかった。
あと、“一人でエレベーターに乗りながら時限発火装置を設置する工作はできない”という説明をするためだけに、実際に神戸をエレベーターから設置場所まで走らせたりする辺りの回りくどい滑稽味のある説明の仕方も、初期っぽい。
ちなみに、神戸と大河内のサービスシーン(シャワーシーン)は、どっちのアイデアですか?(笑)
事前の宣伝番組でネタバレ気味なコメントを喰らってしまったので、覚悟はしていたけど、小野田官房長の死は痛かったなぁー
パンフレットの言葉を借りるなら、「ただの悪役でもない、主人公を守る存在でもない、普通のテレビドラマだったらあり得ないキャラクターの存在を許容している」という点で『相棒』はかなり特殊であり、安易に味方しない主人公側キャラというのが現実味を感じられる部分があって良かったし、何よりあの飄々としたキャラクターと右京とのやり取りが番組の面白い部分の一つだったのに、どこかで決着を付けなければならなかったにしても、その財産を放り投げちゃったことが非常に残念。
亀ちゃんの退場時と同じく、パッと出の設定で死に至るものだから、なんか短絡的なシナリオに見えるんだけど、その原因となる人が、大概のドラマだったら努力家ということでキレイな役処をもらえるであろう“唯一ノンキャリア出身幹部”という立場の生活安全部長―小野田の計略により捨て駒として組織から不条理に切られてしまった人―だったという因果な巡りと…
小野田「おかしいなァ……。殺されるなら、お前(杉下右京)にだと思っていたのに…」
というセリフが、この伏線の浅い唐突な結末を意義深いドラマにしている。
事件の真実を明らかにしようとする右京に、神戸が「それは官房長の意に反します」と苦言を呈すのだが、それでも真実を明らかにすることをやめないという右京の決意の際に言った…
右京「それがボクの、官房長への“別れの言葉”です」
“別れの言葉”であって、“手向け”じゃないところが、脚本のミソだなぁ、と。
糸口はあるし事件解決はこれからだ!…というところで映画がスパッと終わるところは、消化不良感もあるのだけど、巨大組織へ立ち向かう話はそう簡単に解決させずに終わらす『相棒』らしくて、それはそれで好きなのだが、曹良明が公安からどんな情報を掴まされていたのかとか、ラストでスパッと終わる時点で糸口もなくて解決していないことが、ややあるような…