まとめて感想。
夭折の天才画家についての説明を入れるのが、いくら博物館の中でたまきさんが画家に詳しくない右京さんに説明するシチュエーションとはいえ、詳しすぎるというか不自然な流れで一連の説明を行っていて、あまり自然な説明の流れを作れないのが太田愛脚本の弱点だなぁ、とか思っていたのだけど…
若くして散った天才画家と、老いても売れずに画家を気取る殺人容疑者の、反目し合っていた人間関係を炙りだした後、それとは別の関係を明らかにして、ちょっと暖かい感じのシナリオにしていたのが、なかなかに好きだなぁ~、と。
推理モノとしてはあまりパッとする出来ではなかったかもしれないけど、情に訴えかける画家二人の人間ドラマがキレイにまとまっていて、冒頭で私が感じた不自然感を吹っ飛ばすほどの、太田愛脚本の本領発揮という感じで良かった。
米倉斉加年の演技が、役の真に迫っていたというところの功績の方が大きいかもしれんけど。
…ただ、ジイさん、年齢の割に、力強すぎじゃありません?(笑)
10月頭に流れてたSeason9の番宣では、この話の映像が流れていたはず。撮影時期か編集時期的に使いやすかったんだろうか?
Season8と比べると割と早い話数に登場した櫻井武晴だけど、相変わらず、社会派の時事ネタというか、組織腐敗・陰謀モノのシナリオを担当させられているなぁ~
今回は、刑事ドラマにおいて数々のタイムサスペンスや人間ドラマを生み出し、また『相棒』においても「Season3-11.ありふれた殺人」という傑作を生み出すネタともなった“殺人事件の時効制度”が、今年いよいよ撤廃されたことをネタにして、警察組織内の陰謀も交えた時事モノになっているけど、『相棒』のこの手の話の中ではかなり見やすい。
普通の推理モノの仕上がりになっているのが、いいみたい。
古参だけに、伏線の解消のさせ方が見事だったなぁ~
こちらも相変わらず、「あっ、ここ詳しく描写してるってことは、後の推理で使われるんだな」と伏線の張り方が分かりやすくて櫻井脚本のクセが目立ってたんだけど、同じシーンに二重の伏線を張ったり、しつこく聞きすぎる右京に対する人物のリアクションを映してキャラで伏線張りの雰囲気を誤魔化したり、けっこう工夫してあったし。
永遠の特命係第3の男・陣川警部補、またまた登場。
初登場のSeason3・砂本量脚本-長谷部安春監督回では、直情的ゴーイングマイウェイな行動で話の本筋を捻じ曲げてしまうほどの強力なキャラクターが魅力的だった。
映画第1作公開間近だったSeason6・戸田山雅司脚本-森本浩史監督回、亀ちゃん不在時期の新相棒模索期間のSeason7・櫻井武晴脚本-東伸児回では、そこまでの暴走っぷりは見せず、全容の知れない事件に巻き込まれるだけの、風変わりな男になってしまった。
しかし、登場するたびに担当の脚本家・監督が変わるな、陣川くんは。
今回も巻き込まれ型の役どころだが、自分のドジで犯人側を散々翻弄する結果になっていて、「犯人にとっては“バカヤロー”と言いたい気分だったでしょうなぁ」と鑑識・米沢さんに言わせるまでの暴投ぶりは、初登場時の“間の抜けた善人による無自覚な悪意っぷり”が出ていて、楽しい。
珍しく、殺人が起こらない回で、捜一トリオの出番もなしで、ある意味の物足りなさがあるかもしれないが、後味は爽快に近く、キャラ重視の人情もの書かせると太田愛の面目躍如という感じになってきたなぁ、『相棒』は。
ちなみに、なぜか陣川と神戸に面識がある設定になっていて、どうやら年末の「劇場版Ⅱ」はこれより前の話になっている様子。
最後たまきさんが出したピザを、ピザがトラウマ化した陣川くんが無思慮に完全拒否して、右京さんが「そ、それ、僕がもらいます(汗)」と焦っていたシーンはかなり貴重。
あの杉下右京を、こんな些細なことで焦らせるとは、おそるべし陣川!