「激突!キット対マイケル・悪魔の洗脳!奪われたナイト2000」
(原題“CHARIOT OF GOLD”…訳すと、「黄金の古代戦車」)
考古学者・リットン博士からの依頼を受け、発掘現場を訪れたマイケルだったが、現場に着くとリットン博士は錯乱しておりマイケルに襲いかかり死に至る。時を同じくして、ボニーが世界の叡智が集まるヘリオス会への入会を果たす。入会の報告にやってきたヘリオス会のドゥビル教授はリットン博士と親しかったため、デボンとマイケルにリットン豹変の原因調査を依頼。ヘリオス会入会記念パーティに潜入したマイケルはそこで怪しい女性を目撃。そして、ヘリオス会内部では、マイケルやボニーの知らないところで、ナイト2000強奪計画の準備が進んでいた…
日本放映順では、この話が8時枠放送版でのボニー初登場回(ただし純粋な放映順なら、「日曜洋画劇場ナイトライダー5 赤い殺人カー」が先)である。
その前の放送話で流れていた予告編でも「新メンバー・ボニーが登場!」と謳われていた。
それを強調するように、この回のラストの吹き替えでは、ボニーに対して「歓迎会でございます」とマイケルが食事を持ってくるシーンがある。…原語では、「スクランブルエッグとか持ってきた」とだけ言ってるんだけどね。
本国放映順では「激闘!善と悪2台のナイト2000」以来久々にボニーが目立った行動をする回であり、同時にボニーの行動に焦点を当てた初めての回でもあり、日本放映順でこの回をボニー初登場回とすることで、これからマイケルと共に活躍していくことになるボニーの印象を強めようという算段だったのか…
…ただ、クライマックスの一番いいところのマイケルのセリフで「ボニー、俺たちがやってきたことを思い出せ!俺たちはチームだ、最高のチームだ、良きパートナーだ」という、初登場という印象をぶち壊しにするセリフがあり、放映順と齟齬が。
本国放映順ならば、やっと仲間の絆を確かめるセリフが来たか、という感動的なセリフなのだけれど。
ボニーとキットが敵側に洗脳されて、孤立したマイケルピンチ、という話。
キットがいれば困難な状況も即解決、という今までの基本路線を外しにかかっていて、本国順では前回の「偽礼大量生産!!平和な町にはびこる組織犯罪」で、キットも行動不能になって投獄されたマイケルピンチ、という話から一歩進めた形。
今話は「激闘!善と悪2台のナイト2000」で悪役版のキット(カール)が出てきてキットと同じ能力で悪事を働く、という話と同じような側面があるが、キット自身が寝返って敵になるというのはまた違った趣がある。
こういう話では取り戻す過程が面白さを左右するが、描写時間は割かし短め。
機械相手にしてるくせに話し合いによって解決してしまうのはツッコミどころと言えるかもしれないけれど、しかし、機械に疎いお茶の間には人情があって分かりやすい。
それに設定的にも、キットの基本プログラムがマイケルを守る・傷つけないよう設計されているので、それに反する追加プログラムを載せて実行させても基本プログラム通りに修復されて正気に(元に)戻るということで、納得の解答が用意されている。
それよりも、投薬されてるボニーが至極あっさり正気に戻るほうが拍子抜けかもしれん。
最終決戦は、本国順ではナイトライダー初の雨天での戦い。好天ばかりのハリウッドでは珍しい。
この後の「コンピューター泥棒を追え!ナイト2000大追跡ジャンプ!!(NOBODY DOES IT BETTER)」でも雨中の戦いだったし、撮影時期的に雨期だったのかな?
正気に戻ったキットが、敵とのカーチェイスでスキーモード・ターボブーストと眼福のアクションをかましくれるが、最終的に、キットの走りとは関係なく敵がハンドル操作誤って…というかわざと砂山に突っ込んで自滅してるようにしか見えないのは、どうなんだろう?(笑)
この話ではリットン博士の血圧・血流状況を確認するため、キットが腕にはめる型の血液分析装置を出すが、日本放映版ではカット。
すでに放映していたシーズン2では、スキャナーによる無線診断がキットの標準装備になっていたから、それよりも前時代的に見える有線式の装置を出すとマズかったか。
ちなみに、この話で血液分析装置が出てきた箇所には、後の話でアナライザーが取り付けられることになる。
本国順では、この回でキット装備の追加というか、コムリンクを介しての無線遠隔開錠ができることが明らかに。
劇中の台詞には説明ないのだが、設定では物体の固有振動数に合わせた波長で共振を起こしてモノを自在に動かすことができるという科学的な理由付けがある。
…のだが、子ども時分に見てた時はどういう理由で動かしたり開錠してるか分からなくて、オーバーテクノロジーのキットとはいえ、もはやドラえもんレベルの科学力だなぁと思っていた。
いや、今聞いても、この機能だけ科学考証の世代レベルが他と段違いじゃん、と思うほどだが。
ちなみに、日本放映版の次回予告では「新機能追加」とか謳ってたが、マイクロジャムはシーズン2で散々使ってますよ。
とにかく本国順では初登場の機能らしく原語では「開けられるか?」とマイケルが聞いた後、「もちろん。鍵のメーカーや製造番号まで判りますよ」というキットからの機能説明と「お前は至れり尽くせりの車だな(You're a full-survice car)」とマイケルの感想となっているが、吹き替えでは「ずいぶん旧式のダイヤル錠ですね、少々お待ちを」―「毎度お世話になりますねぇ」と何度も使ってることを印象づける真逆のことを言っている。
「危機一髪!ナイト2000 窮地の女性を救え!」
(原題“White Bird”…訳すと、「白い鳥は…」)
新聞を見て慌てて走り出すマイケル。新聞にはステファニーという女性が犯罪組織と関わりがある人物として報道されていた。マイケルはステファニーの保釈金を用意し彼女を解放する。しかし、ステファニーにはマイケルと面識はなかったが、マイケルは彼女に執心していた。それもそのはず、ステファニーはマイケルがかつてマイケル・ロングだった時の婚約者だったのだ。ステファニーは命を狙われることになり、マイケルは財団で彼女を匿おうとするが、デボンはステファニーに固執するマイケルが気がかりだった。
日本未放映の話。
未放映の理由は簡単。日本放映順では時系列の整合性が取れないからだ。
今回の話は続編があり、その続編・シーズン2「ビデオテープは死のサイン!芸能界潜入!マイケル歌手に!!(LET IT BE ME)」を先に放送していたから。
あんな、本編の3分の1がマイケル…というかデビッド・ハッセンホフのリサイタルみたいなことになっている薄い内容の回を放映してこっちをお蔵入りにするぐらいだったら、こっちのためにとっとけ!
しかし、ボニーとエイプリルが双方の話の展開に大きくかかわっているため、シーズンを跨いでのエピソードの入れ替えは困難を極めるな…
今までの話であれだけタフガイぶりを見せてきたマイケルが初めて弱気な表情、それも情けないといってもいいほど憔悴した表情が見られる回である。
情けないのが残念だが、しかし、一番の思い人を救えずに病院のベッドで寄り添うマイケルのその様子や別れ際の様子は、当たって砕けろで何でも解決してきた単純明快なマイケルの意外な一面を描写して、マイケルのキャラを深めている。
マイケル・ロング時代の婚約者が現れたということで、あれだけマイケルにツンケンしていたボニーも、沈みがちな今話のマイケルには同情的・協力的になり、デボンも愛を取り戻しかけている二人の今後の運命が過酷になるだろうことを心配してマイケルに助言するなど、周りの登場人物の描写も深まっている。
初対面のはずのマイケル・ナイトに信頼を覚える自分に戸惑いながらもマイケルを受け入れていくステファニー(スティービー)も魅力的な人物として描かれている。
さらに言うなら、中の人というか、マイケルとスティービーを演じるデビッド・ハッセンホフとキャサリン・ヒックランドはこの時期実際にお付き合いしていたということで、その部分が演技やフィルムの出来に影響しているところはあろう。
クライマックスの、空港で逃げる犯人の乗るセスナと並走して、セスナのどてっぱらに強烈なターボブーストかます豪快なアクションシーンは眼福モノ。
これだけでもこの回を見た甲斐があるのに、なぜ日本で放映してくれなかったんだ!
エンドロールがこの回から、砂漠を手前に向かって走ってくるキットの映像に本格的に代わる。(「偽礼大量生産!!平和な町にはびこる組織犯罪」で一度このエンドロールになっている)
以前のマイケルの顔を映しつつのエンドでは、今話みたいなマイケルが抒情的に総括して終わる回では余韻を作り出すことができなかっただろう。
ただ、その直前、マイケルと悪漢との対決で大事な館の調度品をメチャクチャにされたデボンに、マイケルが「修理するよ!」「…やっぱダメだな」とかやってるこの回唯一と言ってもいいギャグシーンがあるんで、抒情感減少してるかもしれんが(笑)
ちなみに、『ナイトライダー・コンプリートブック』によると、この話がシーズン1で撮影された最後の話だということ。
シーズンの打ち上げ後、デビッドとキャサリンは婚約して旅行へ、シーズン2放映期間には結婚・婚約旅行に行っていたらしい。
この時分はそんなに絶頂期だったのに、十数年後、夫婦関係が最悪の結末を迎えることを、デビッド・ハッセンホフはこの時点ではまだ知らない…(汗)
「陰謀を暴け!トラック乗りを狙う強盗」
(原題“Knight Moves”…訳すと、「騎士と渡り行く」)
この話も日本未放映になった理由が簡単だ。
このシーズン1の後に放映するシーズン3の中に、トラッカーを題材にしたほぼ似たようなあらすじの話があるから。
個人トラッカー連合を狙った事件が起こり、マイケルがガードする中連合は輸送を続けるがことごとく妨害され、最後はF.L.A.G.総出の作戦で敵と直接対決する…
シーズン3のはトラッカー家族を描くことが大きな主軸だったが、この話はトラッカーとも渡り合える男勝りで勝気な女性・テリーの生き方をマイケルとの関わりで見直していくことが大きな主軸である。
原題の"Knight moves"は、直訳だと「騎士が動く」という単純なサブタイトルに見えるんだけど、調べたところ1976年にヒットした青春ロック"Night moves(思い人と過ごした夏の夜の渡航)"というのがあって、そこから引っ張ってきたと思われる。テリーの境遇と重ねたものか?
何かとハマりやすいキットだが、この回のキットはトラック無線にハマってる。
『ナイトライダー』のOPに出てくる、ハットを被ったデボンとマイケルが財団トレーラーの周りを指さしながら歩くシーンは、この回のもの。
マイケルに嫉妬した町のトラッカーたちがキットに悪戯するモーテルのシーンで、無人のキットが動く際、カメラに映らない位置で中に隠れているスタッフの姿が助手席にちらりと見える(笑)
財団トレーラーで囮作戦を行う際、運転席を狙ってきた敵の目の届かない後部ハッチからキットが隠し玉で出てくるシーンは、作戦として単純でお話的には面白みというか意外性に欠けるが、秘密ハッチから秘密兵器登場な流れはオトコノコの感性をくすぐるものがあって好きだなぁ~