「激闘!善と悪2台のナイト2000」
(原題“TRUST DOESN'T RUST”…訳すと、「絆は傷つかない」)
この話はいわゆる“ニセ主人公モノ”。
『ウルトラマン』とか『仮面ライダー』でよく見られる、悪人がヒーローと同じ力で対抗すべく・あるいはヒーローを陥れるために、そっくりのニセモノを作って戦わせたり悪事を働かせたりするヤツだ。
ニセモノの方は、体のどこかが不自然に尖っていたり色違いだったりして、視聴者には判別が簡単だったりするのも、お約束。
『ナイトライダー』の場合、主人公マイケルのニセモノが現れる話も後々あるのだが、今話はキットのニセモノ。
俳優のニセモノが存在するというのを撮るのは結構手間がいるが、キットの場合、被写体が車だから、そこら辺簡単。
『ナイトライダー・コンプリートボックス』を読んでみると、初期はキットの撮影用に使う改造トランザムの台数が少なかったというが、それでも3台はあったというから、ここから「予備車あるんだから、コイツを利用できる話でも作ろう」というアイデアが出てくるのは、当然のコトなのかもしれない。
ニセモノが出てくる話というのは、どういう作品でも大概面白く仕上がってきて、『ナイトライダー』でも例外ではないので、日本放送版で2時間スペシャル以外に日曜洋画劇場版の作品として選ばれたのも納得というもの。
ここで登場するキットのニセモノの名はカール。
キットより先に制作されキットと同等の能力を持つが、自己防衛を優先させるプログラムが災いし凶暴で手が付けられなかったので、博物館に廃棄されていたのが、コソ泥たちの手違いで蘇ってしまった、という設定だ。
『ナイトライダー』ファンの間でも、コイツの人気は高い。
ちなみに、キットが"Knight Industry Two Thousand(ナイト産業社製2000版)"の略なのに対し、カールは"Knight Automated Roving Robot(ナイト社製自動行動マシン)"の略だ。
この話のカールは、“悪のナイト2000”というより、無邪気な暴れん坊のような感じ。
もっというと、アホの子っぽい(笑)
ただのスピーカー付人形を勝手に敵認定して、体当たりでぶっ壊して「フハハ、原始的な機械め」と勝ち誇るとか、よく知りもしなかったブタ箱の意味を性急に理解して「それイヤ」と一目散に逃亡とか、サーキットの修理について駄々こねるとか、ラストもいくらでも避けようがあるのに正面衝突の危機にわざわざ危ない崖方向に向かって避けていくとか、頭のネジが一本抜けているというか、電子頭脳の回路がどこか抜けてる気がする。
ちなみに、カール再登場の「悪魔のナイト2000カールまたまた出現!復讐の空中大勝負!!」では、カールが悪知恵で一般人を悪事に唆していて、副題どおりの悪魔っぷりを披露してくれている。
そして、そっちの話は「キットが悪意を持ったらどうなるか」というシミュレーション・エピソードになっているのだが、今話は「キットを悪人が使ったらどうなるか」というIFを膨らました部分がメインである。
実際ナイト2000を悪用したら、ガワが硬いからどんな壁もブチ抜くし防御最強、悪路や袋小路もジャンプで飛び越すし、しかもA.I.搭載してるから労せず手数が一つ増えたような形になって、お手軽に犯罪し放題だからなぁ
そして、悪事に利用する方も、最初は小金目的の小さな欲望を叶えていたのが、悪事の規模がどんどん肥大化していって、遂には仲間割れ、そしてカールに裏切られて破滅、とこれまたこの手のお話のお約束を行っている。
ニセモノが登場する回では「これが無いと意味ないだろ」という、ニセモノの悪行についてホンモノの方が疑われたり被害受けたりとばっちりを食うシチュエーションは、この話の中でもちゃんとある。
ただし、CM明けでいつの間にか容疑晴れててそれ以後「このままじゃ、またオレたちの方が疑われちまう」みたいな話題やシチュエーションにならないので、エピソードのつっこみ具合として物足りない感じではあるけど。
警官に「ニセモノと区別するために、色を塗り替えては」とアドバイスされてるけど、キット自身が「私はこの黒が気に入っているのです。」と発言。やはり黒のボディカラーには強い思い入れがあるようだ。
ちなみにカールは、再登場回ではツートーンカラーに塗り分けているので、ボディカラーについては頓着していない模様。
キットとカールの決着は、切り札として取り付けられたレーザーが決定打にならなかったせいで、ある意味煮え切らない形に終わっている感じ。
キットが正面衝突コースにいるのが前から分かっているのに、直前で避けようとしてハンドル操作誤ったら崖から落ちてドカーンで終了、って、「同等の力を持っているせいでキットでも倒せない敵との対決」というテーマの話にしては、直接のガチンコ勝負なしの結果なんて安易すぎませんかね?
分子結合核を持っているナイト2000が崖から落ちた程度でぶっ壊れた挙句爆発するのかというところもあるし。(実際、2年後大した損傷もなく復活する。)
まぁ、機械である己を信じるカールと、人を信じる(人が運転する)キットとの対決の決着を寓意的に付けるとすると、これがベターなアイデアなのかもしれないが。
本国放送順では、ボニーが実働面で活躍する初めてのエピソードと言っていい。
途中さらわれて囚われのヒロイン的な形になるし、カールとの対決時もキットから降りることなくマイケルと共に立ち向かうし、カールを討った後は吊り橋効果で危うく(笑)マイケルといい仲になりかけてしまう(ま、3秒程度ね;笑)
★本国放送版&原語と日本放送版&吹き替えの違い
本国順ではこのエピソードで初めてキットがレーザー兵器を搭載するが、日本放送版では先にシーズン2の初回スペシャルを放送してしまっていて、そこですでにレーザーを使ってしまっているので、吹き替えは「レーザーを以前よりパワーアップさせた」としてある。
この後のシーンで、ボニーから「レーザーは2発しか撃てない」と注釈が入るが、日本放送版ではカットされていて、カールに対して2発目のレーザーを撃った後、「今のが最後のレーザー!」とボニーのセリフを入れて説明する流れになっている。
日本放送版見慣れた人にとっては、キットのボイスインジケーターというと3連パーグラフであり、カールがそれのアレンジバージョンみたいな感じになっているが、実は、3連パーグラフのボイスインジケーターは本国版ではカールのものの方が先。この時分のキットのボイスインジケーターは、まだ赤の四角ランプがパカパカ光るタイプのものだった。意外とカールの方がおしゃれなデザイン。
…の割に、カールのボイスインジケーターが映るカットは、ボイスインジケーターの部分だけ作って、テーブルの上にそれだけをちょこんと置いて撮影した「もうちょっとリキ入れて作れや」と言いたくなるレベルのものだが(汗)
日本放送版では、「重戦車砲撃網大突破」の話から直結しているので、冒頭のキットがマイケルの女性遍歴について語るシーンには、ロビン・ラッド中尉の名前がアフレコで足されている。
そして原語では、マイケルが「(複数の女性とのお付き合いは)友達の輪を広げてるの」と言ったことにキットが「友達なら私がいるから十分でしょ」と反応していてキットが意地らしくて愛らしい感じなのだが、日本語アフレコでは「じゃあどうしてその友達同士で(痴話)ケンカになるんですかね?」と意地悪く答えていて可笑しい。
そーいえば、「重戦車砲撃網大突破」ラストも、原語では、巻き込まれ型の事件介入で使ったお金を経費として認めてくれとマイケルが嘆願するシーンだったのに、日本語アフレコではデボンがマイケルをナイト博物館視察に引っ張っていく内容にアレンジされていたなぁ。
そしてラストのキットのセリフ。字幕では、(同類が居なくなっても)「天涯孤独、それが私の運命」と現状を肯定して話が終わるのだが、吹き替えは「本当を言えばマイケル、すごく寂しい気分です」と一歩進んだ解釈でアフレコしている。
「決死の替え玉作戦!ナイト2000凶悪武装軍団マル秘計画を暴け!! 」
(原題“INSIDE OUT”…訳すと、「反転」)
なかなか証拠を掴ませないキンケード大佐率いる犯罪シンジケート集団に、その組織に雇われた人間・デューガンだと偽ったマイケルが潜入、突破口を掴もうとする話。
副題の英語原題は「INSIDE OUT」は「さかさま」という意味だが、今話の趣旨をよく踏まえているサブタイトルだと思う。
マイケルがデューガンと入れ替わるし、マイケルが探っていた大佐の目論見も途中で別のものと入れ替えだと判明し、そもそも大佐の行動を阻止するために動いていたのに終盤は大佐の行動の手助けをしなければならない羽目になり、ラスト刑務所で外から来るを待っていたデボンは内側に入ってきたキットとトラックを見て…という感じで、逆転逆転の話だ。
全体的なお話に、あまり厚みはない感じ。
細かい部分を抜かすと、犯罪組織に潜入してその犯罪を実行する、というのが大筋になっていて、あまり大きな紆余曲折がないものだから。
ただ、大筋がシンプルであるがゆえに、枝葉の逆転逆転の話が面白く栄える。
冒頭暴走中のキットを制止しようとしてターボブーストで逃げ切られた警官が、中盤にも出てきて、キットと繰り広げるコントが笑える。
事故渋滞の迂回路を、無人カーであるキットに懇切丁寧に説明して、警官「運転には気を付けて」―キット「ええ、いつも心がけています」とまで言った・言わせたところで気付いて、他の警官に運転手の顔を見たかと聞かれたところ、「もちろん!……って、アレ?」となってしまうのが、あまりにも滑稽。
ちなみにこの警官、冒頭でも、ターボブーストに驚く他の警官の「一体何なんだあの車?」という呟きに、「ポンティアック(車種名)」とマジメにそのまま答えて、トボけた味を出している。(吹き替えではポンティアックのセリフ部分は「化け物だ」と素直な感想になっている)
マイケルが大佐の部屋に侵入する際のキットの監視モニターが、ファミコン以前のコンピューターゲーム並みの単純グラフィック(初代パックマン以下か?)で表示されていて、時代を感じさせるが、『ナイトライダー』見てた当時の我が家には、テレビゲームというかコンピューターがPC8800という、今じゃ骨董品クラスの処理能力の低いものぐらいしかなくて、それで遊んでいたのと同じようなグラフィックが映るものだから、個人的にこのシーンには親近感とちょっとした興奮を覚える(笑)
キットが外部に連絡しようと屋敷を脱出するために、門の監視施設の電子装置発火させて門番の気を逸らすのだが、目論見通り火事の消火に門番が注目してキットは脱出に成功…
…はいいとして、なかなか火が消えなくて大火事になりかけてるのに、自分で消せない火が出たら誰か他の奴に知らせろよ、門番!(笑)
★本国放送版&原語と日本放送版&吹き替えの違い
ターボブースト並みに多用される機能であるマイクロジャマー(電子装置操作電波)だが、本国放送版ではこの話で初めて搭載される新機能。
しかし、日本放送版では放送順いじってきたせいで今まで散々使ってきた機能ということになっている。
にも拘らず、マイクロジャマーを新しい機能として取り付けたという説明がそのままアフレコされている。
このシーンのボニーが、マイケルの怪我よりもキットのメンテナンスを心配していて、さっくりヒドい。
あと、キットよりもドライバーに改良の余地ありと評するトコも扱いのヒドい部類だが、マイケルも自虐的にそのセリフをハモってるから、表面上はまだマシか。
この扱いを受けてマイケルが「(ボニーの)つなぎの中身はロボットなんじゃないの?」と皮肉るのだが、キットがそれを受けて「中身はロボットじゃありませんね、身長は~」とスリーサイズ含む等々の身体データ解析を行ったところ、マイケルに止められるのだが…
日本放送版ではマイケルが「覗きはよせ」と言って、キットが「はぁーい」とおチャラけた返答するので、キットがおふざけをしたという感じになっている(ちなみにここの野島昭生の演技は、キットを抱きしめたいほどカワイイ(笑))
一方原語は、マイケルが「Shut up(黙れ)」と制してキット無言でシーンが終わるので、ここら辺のやり取りがキットのマジのボケだと分かる。
初期のキットって、いかにもコンピューターという感じの、融通の利かないやり取りとかボケが多いからなぁ~
そして、キンケード大佐の屋敷に入る際のキットの反応も、字幕と吹き替えで違う。
原語では「(マイケルがヤバくなった場合自分もヤバくなるのがヤなので)ここに駐車してはどう?」―マイケル「ダメ」―キット「やっぱり」という案外薄情なやり取りになってるが、吹き替えは「私を置き去りにはしないですよね?」―マイケル「するもんか」―キット「良かった」と絆を重視したアフレコに替えられている。
日本放送版では、デューガンがキンケードの屋敷に辿り着いて捕まるまでの一切の描写がカットされている。
キンケード大佐がどうやってどのタイミングで本物のデューガンにあったのか、本国版の方が分かりやすいといえるが、途中のデューガン逃亡のシーンは日本版でもカットされていないから結末は予想できるし、デューガン登場時の衝撃が出るから日本版でも私は好きだな。
「消えた証人を探せ!爆走ナイト2000波止場の大激突!!」
(原題“THE FINAL VERDICT”…訳すと、「最終評決」)
無実の殺人罪を着せられた友人を救うため、マイケルが友人のアリバイを証言してくれる男を探すのだが、その男・会計士マーティは、ファルコン社の裏帳簿制作の関わる事件で警察・社長一派双方から追われていた…という話。
こういう筋の話なら、マイケルは警察・社長一派を振り切って、接触困難なマーティを探し出すと同時に、友人の殺人事件の謎も追わなければならない、というハードタスクが課せられて物語は慌ただしく複雑に進行しそうなものだが、友人の殺人事件の件は、エンディング前の最終パートで「真犯人も見つかって良かった」とセリフ一言で済まされてしまう肩すかしぶり。
最初っからマーティを目指すようなシナリオしとけばいいのに、と強く思うが、ここで女性キャラ出しとかないと、この話ヒロイン居なくなっちゃうから(笑)
ヒロインいなくても、ヒロイン級にか弱いマーティの描写でこの話は結構持つけどさ。
警察・社長一派・マイケルの3勢力に追われてビクビクのマーティが哀れだ。特に後半に自宅に帰ろうとするところ。
この話で、キットとの通信機付き腕時計のコムリンクが初めて壊れる描写があるのだが、キットと連絡取れなくてマイケルたちが更なる厄介な状況に陥るのかと思いきや、キットが自己判断で動いてさしたる困難もなく状況解決するし、最終的にオチの腕相撲ネタに使われる程度だったのが拍子抜け。
ラスト5分近くは延々とカーチェイスで、坂道の多いサンフランシスコでの立体的なチェイスを堪能できる。
本国版ではこの話でキットに似顔絵機能が追加されているが、この機能も日本版では散々出てきた機能。
なので、日本語版アフレコでは、似顔絵機能の解像度がアップしたということになっている。