観るに決まってるじゃない、だって『踊る』ファンだもの。
面白くなりそうじゃないなという予感があっても。
…一般的というかオタク的に、そーゆーのはファンじゃなくて、信者か(笑)
-ストーリー STORY-
青島刑事が刑事課強行犯係の係長に昇進し、新湾岸署の開庁式を3日後に控えて、旧湾岸署から新庁舎への引越し作業が大騒ぎで進む中、奇妙な金庫破りとバスジャック事件が起きる。さらに引越し作業のドサクサで拳銃三丁が紛失してしまい、その拳銃を使った殺人事件が発生。
本庁からやってきた管理補佐官の鳥飼と共に捜査を開始する青島だったが、犯人はネットを通じて犯行声明を突きつけ、青島が過去に関わった事件の犯人たちの超法規的釈放を要求してくる。
犯人を捕まえる糸口は見つからず、遂には新湾岸署が占拠されてしまうのだった…!
というワケで、初日突撃してきました、7年ぶりの『踊る大捜査線』新作。
作品的に高尚なモノに仕上がるワケもないので、エンターテイメントとしてどれだけ楽しめるモノに仕上がっているかが『踊る』の作品的なカギなんだけど、やっぱりそこらへんイマイチ。
畳むのに大失敗していたとはいえ、前作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』で大風呂敷を広げに広げきったので、それと見比べるというか、それに合わせて期待感を膨らませると、『踊る3』はスケール感がしょぼく見えるのは必然ではあるが。
まぁそれは分かりきっていたことなので、個人的にはTVシリーズみたいなスケールや構成の話でも満足できるなー、と期待感のレベルを下げて観に行ったのだけど、中途半端かつ強引に話のスケールをデカくしようとしてたのが気になってねぇ…
話や設定の整合性・リアリティといった説得力なんか今まで以上に二の次で、ハデな展開や印象的な演出・撮りたいシーンを出し続けるために、勢い任せで話が展開していったなー
なんちゅーか、いつもの本広監督作品ですねー(笑)
前作のレギュラーキャラの勇姿をもう一度見れる、という続編映画の楽しみも、いかりや長介が亡くなり、所属事務所関係で水野美紀や筧利夫が出演してなくて、そして織田裕二との不仲のせいで共演調整されてギバちゃんの出番の少ないせいで、それもイマイチだし。
あと、印象的なスコアを提供していた松本晃彦が音楽担当から外れて、『ガリレオ』、『SP』、『MR.BRAIN』の菅野祐吾に交代してたのも、“これぞ『踊る』!”という音楽が聴けず残念だった。
湾岸署メンバーがコメディーリリーフなせいで捜査(ストーリー)の重要な部分では本庁側の人間ばかりがクロースアップされてるとか、犯人や逮捕のシーンについての描写とか、今までの『踊る』のセオリーを外しにかかっている部分が多いせいで、なんか“ああ、『踊る』を見たな~”という感覚が薄いのもマイナスかもしれない。
パンフの亀山プロデューサーのコメントにもあったけど、『新・踊る大捜査線』という意気込みで観ると、もう少し楽しめるのかもしれん。
(…でも、個人的に、そーなってるだろうことを予想しながら観てたのではあるが)
それでも、旧湾岸署という存在そのものに決着を付けるラストは、何だか大好き。
そこが好きということは、私もまだまだ『踊る』を楽しめる人なんだなー、と思えた。
まだ、『3』をもう一回観てもいいな、と思っているもの。
…世間というかオタク界隈では、それを信者というんですけどね(汗)
ちなみに、『踊る大捜査線 THE MOVIE 1 湾岸署史上最悪の三日間』が公開され大ヒット・社会現象になり、刑事ドラマのスタンダードを作り変えて歴史の分岐点になった年、それまでのスタンダード代表みたいな存在だった『あぶない刑事』の映画も『踊る』公開直前に公開されてて、刑事ドラマの時代の移り変わりの象徴みたいな出来事になってたけど、今年も『踊る3』の後、今冬『相棒-劇場版2-』の公開が予定されてたりする…
以下、ネタバレ気味な感想が続きます。
■勘違いドタバタモノ
今どき、「医者が診断間違ってたせいで死期が近いと自分や周りが勘違いするドタバタストーリー」ってどーなのよ!?(笑) しかも話のメイン要素としてだぜ。
あんまりにも分かりやすかったせいで、医者から検査入院勧められて青島が蒼褪めるというコトの発端のシリアスなシーンから既に、観客から笑い声が漏れてましたわ。
まぁ、それもすぐに勘違いであったことが観客に示されたし、かつ、神田署長の計略で「(落ち込んでる青島の方が迷惑被らなくて都合が良いから)本人は言わないでね。青島君は病気ってコトにしておこう」と本人への情報提示が意図的にストップされる展開だったので、おハナシ的にはまだ救われてた方だったが。
そしてそれのおかげで青島が死ぬ気になって大暴れし始めて、署長が「しまった! アイツの性格、読み間違えてた!」と蒼褪める展開になったので、それには大笑いさせてもらった。
■音楽
松本晃彦が降りたからどうなると思っていた『踊る』の音楽だけど、メインテーマである「Rhythm and Police」が、ここぞというところでしっかり流れたし、「C.X. -Orchestra Ver.-」もオープニング曲として出てきたり、印象的なテーマ音楽はポイントポイントで使われていたので、なんか安心した。
(ちなみに今回の映画は、オープニングに「Rhythm and Police」ではなく「C.X.」が流れるという、TVシリーズ第1話仕様の試み。「Rhythm and Police」をBGMにしているからこそのスタイリッシュなオープニングが見れず残念)
菅野祐吾の音楽、『踊る』の雰囲気を取り込みつつも映画館に栄えるスコアになっていたので、そちらはそちらで好印象でした。
■理
『踊る』の主軸である、本庁と所轄との軋轢…
『踊る1』ぐらいまでは「さもありなん」という感じの不仲さだったけど、『2』で本庁がかなり強引というか言いがかりに近い形の所轄署軽視をしていたのが、軋轢の程度が低くなっていて気になっていたんだけど、今作『3』でもその低さが変わらず、面白みが薄かった気がした。
しかも後半は、青島が無茶やりすぎたせいで、贔屓目に見てても本庁の方の言い分の方が正しく聞こえてくる始末に到っては、本末転倒じゃあないですか…
■盗まない強盗
映画冒頭を彩る、映画『踊る』名物、珍事件。
いつもはメインの事件とは別の犯人による犯罪なのだが、今回はクライマックスの展開のための布石ということで犯人が同一で、話に一本の筋が通っている格好。
でも、金庫破りは、新湾岸署も似たようなセキュリティだから、予行演習としての意味合いがあるとして、バスジャックは後の展開に結びつかなくて、監督がただ派手なコトをやって見たかったという都合しか見えない(汗)
新湾岸署の警戒レベルをセキュリティ作動状態まで持っていくために危機感を煽るためかもしれないけど、別に犯人側はバスジャックについて何もコメントしてないし…
あと、あの犯人のメンツで、バスジャックなんて大層なコトができるんかいな? 直接手を下さなければならないということだから、遠隔操作の新湾岸署占拠よりよっぽど直接的リスクが高いんだけど。
■ヤツらを解放せよ!
重箱の隅を突くような話だが、今回の犯人が要求してきた、“ある共通点を持つ犯罪者9人の釈放要求”…
本庁管理補佐官の鳥飼@小栗旬が「青島さんが逮捕した犯人ですよね?」と聞くけど、古田新太以外は青島は手錠かけてなくて、公式には本庁捜査員が逮捕したことになってまっせ。
■旧湾岸署
旧湾岸署爆破というラスト…
単なる舞台背景に過ぎないとはいえ、いつものメンバーがいつも居るお馴染みの場所なので、無意識に愛着が沸いてきたりして、そんなお馴染みの場所、しかもお馴染みで登場人物たちが平穏無事に物語を進めていくメインの舞台だからこそ激変することが許されない場所が、とんでもないことになるという展開は、何かワクワクしてくるモノだ。
「歳末SP」で立てこもり現場になったときとか、他作品でも、『ドラえもん』の『雲の王国』で野比家が洪水に飲まれていくところとか、『あぶない刑事フォーエバーTVSP』で港署刑事課で犯人との銃撃戦になるクライマックスとか、『ヱヴァ』で発令所にまで使徒が侵攻してきて初号機との格納庫バトルになるときとか…
なおかつ、旧湾岸署は今回引越しがあって通常状態でもお役目御免という存在(そして荷物が搬出されているのでお馴染みの小道具が突っ払われた淋しい光景になっている)なので、そこが派手に吹っ飛ばされていったら、哀愁と感慨もひとしおというもの。
…しっかし、爆発は刑事ドラマのド派手な展開の定番とはいえ、『踊る』は銃撃戦含めそういうのをしなかったところに目新しさというか特徴があったのに、スピンオフの『交渉人真下正義』でそのタガが既に外れていたとはいえ、『踊る』でこれをやっちゃったらフツーの刑事モノと変わらないというか、何歩か後ろに下がってしまっている感じがした。
ちゅーか、パンフにいろいろと書いてはありましたが、日向真奈美@小泉今日子を再演させた理由って、旧湾岸署爆破というこの強引なラストにそれなりの説得力を持たせるために、旧湾岸署という場所にこだわりを持つ犯罪者(しかも爆破が行き当たりばったりの軽薄な展開にならないように、計画的な犯罪を立てられる知能犯)が必要だったから召喚されたのではなかろうか?
…まぁ、説得力といっても、日向真奈美の旧湾岸署へのこだわりはトンデモ思考の塊すぎるので、「とりあえず体裁が整った」程度の説得力しかないんだろうけど(汗)
■その他
どーでもいい話だけど、中盤ガサ入れしていた容疑者の部屋で、『SHUFFLE!』のポスターと『クイーンズブレイド』のレイナのフィギュアを確認。
仮にも一般向け作品なのに、萌えの範疇に留まってる『SHUFFLE!』はともかく、裸体全開・痴女っぷり全開作品のフィギュアを置くな、とツッコミたかったけど、『SHUFFLE!』は萌え作品ではなくて元はエロゲーだったな(汗)
ちゅーか、劇中劇の『ピンクサファイア』ではダメだったんですか?