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Take@管理人が、知ったかぶりのテレビ番組批評やとりとめもなく面白くもない日記などを書く、オタク臭さ全開のくどい不定期更新ページ(泣)
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 『相棒3』7巻に収録されてる2話は、どちらも重いテーマを語らせる話で、砂本量vs櫻井武晴、という図式。
 軍配は櫻井脚本に上がった感じかな?
 しかし、重いテーマの扱い方について、それを大上段に掲げて話を作るのか、エッセンスとして用いるのか、というスタンスがそもそも違うので、この比較にさしたる意味があるとも思えないが。




 砂本量脚本の「予告殺人」は、電話で予告された名前と同じ人物が殺される連続事件が発生、事件に振り回される人々のパニックぶりを描くことが中心の、砂本脚本らしいインパクト重視の作り。

 狙われる人物が名前しか明らかにされず、ある種の無差別殺人となっている状況下で、市民は戦々恐々、警視庁も全庁挙げて連日連夜の広域捜査を余儀なくされ、否応なしに増していく緊迫感…
 大規模ロケも爆破シーンもない低予算的な撮影なのに、僅かなパニック描写だけで、下手なアクション映画よりも遥かに大きく深刻なスケールとサスペンスを感じさせる、効率のいいシチュエーションを作り出す手腕は相変わらず見事。
 シチュエーションをただの設定だけに腐らせず、話が後半に進むに従って全体的に「ピリピリとした空気」がひしひしと感じられてサスペンスが盛り上がっていったり、その雰囲気が原因で登場人物たちの葛藤が生まれたりするなど、ちゃんと充実したドラマが繰り広げられて、ストーリー的に有効に使われているのも、当然と言えば当然ながら、素晴らしい。

 そこに、過去に警察と世間の無関心のせいで姉を殺され心の傷を負った被害者とそのカウンセラーの話が絡む、という重い要素が加わっている。
 普通の推理モノのセオリーからいくと、「自分(や姉)の味わった恐怖を他の人間にも思い知らせたい」動機があるこの二人のどちらか犯人(もしくは共犯)で間違いないのだが、そういう普通の話にしないという壮大なミスリードを行いつつ、しかし、二人を犯人にしなかったがために、動機として疑われたその思いを、犯罪に走る歪みのない純な思いとして視聴者にテーマを投げかけることを可能にし、捜査に協力せず事件を複雑化させる第3勢力として物語の緊張感をさらに高める役割を担い、またその怨みと心の傷を解消するためのドラマが用意されることで物語内容が充実される…
 …という単なるミスリード要員に終わらせることない抜かりのなさ。


 ただ、ところどころに見ていて引っかかる部分もある。

 心の傷を解消するドラマ部分として、「自分も姉を救えなかった罪悪感」を、犯人逮捕に協力することで、自分が感じたのと同じ恐怖に陥れられている人々を救い、自分をも救うという流れになっているけど…
 「君の協力があれば、救えるんだ」と薫はお願いっぽく言ってはいるけど、人々が恐怖でパニックになっている場所まで強引に連れ出されて光景を見せられては、お願いではなく、ほとんど強制だ。
 それに、この解決方法では、彼女が一番強く憤っている「警察と世間の無関心のせいで姉を殺された」問題については何も触れるところがなく、その部分では救われた感がほとんどないのがどうも…

 ミスリードにしたおかげで、犯人が割と安易な人物に収まってしまったし、その犯人が予告殺人を“行わなければならなかった”理由がまったく不明になってしまった(これが上記の二人なら問題はないのに)。

 あと、撮影方面については、犯人の車が最後のターゲットの家まで来ていたのが警察に見つかるシーンで、結局犯人の車に逃げられる結果が待っていたのだが、車と伊丹たちが対峙するカットが長めに入れられていて、緊張感はあるけれど、今回の慌しい展開の中では、妙に浮いた間になっている気もしないではない。
 間と言えば、右京たちが病室で犯人を捕まえた後、右京たちを直接は映さない廊下のカットに移るのだが、警官たちが「どうしました!?」と駆けて部屋に入っていき、右京「この人が犯人です。連行してください」―警官「はい!」というセリフが音声だけ流れてきて、しばらくして犯人が警官たちに捕まえられて出てきて画面下側へフェードアウトしかけるまで描かれており、端折ったり短縮描写にしても構わないのに、やけに逐一経過を描いていて(しかも一部は音声のみで、ちょっとマヌケさを感じる雰囲気がある;)、それが何か可笑しかった。





 櫻井武晴脚本の「警官殺し」は、サブタイトル通りの警官殺しが話の発端ではあるが、市民から慕われていた交番巡査が隠していた不祥事を暴き出して以降の後半からは、それを隠蔽しようとした警察上層部の陰謀という『相棒』お得意の「組織腐敗」のテーマが浮かび上がってきて、さらに警察と自らの良心との板挟みから自殺したその巡査の悲痛な決意を踏みにじってまで真実を明らかにすべきかという物語上の葛藤もそこに加わっていく構成。

 上記の砂本脚本が重いテーマをエッセンスにとどめたのに対し、こちらはほとんど直球勝負。
 右京たちの捜査で明らかになる、事件の裏に隠された「意外な真実」は、推理モノを見慣れた人にとっては、死んだおばあさんの話が出てきた時点で真相が読めてしまって、意外でも何でもない真相だったりするが、そういう推理モノの話を途中で解決させてしまって、むしろ重点はその後の顛末を如何に描くかというところに置かれている。二重構造のシナリオになっている、とも言えるかも。
 数々の障壁や懸念材料がある中で、どうやって真実を明らかにしていくか、という過程を坦々と進行させて、組織の膿というか人の業を炙り出していく、「ありふれた殺人」を書いた櫻井武晴らしい、重いテーマに見合った重いストーリー。

 事件の裏に組織の隠蔽工作があり、真実を明らかにすることで、その悪事と深い関係にはない善人の人生を破壊する虞への葛藤、という流れは、Season1で同じ櫻井脚本の「下着泥棒と生きていた死体」と同じ構造なのだが、「覚悟はありますか?」という右京の質問が「真実を明らかにするために、自らの進退をかけることができるか」というヒロイックな問いかけではなく、第三者を巻き込んでまで真実を明らかにできるか」というさらに深い意味だったとガツンと気付かされるSeason1の方が、テーマが効果的に現れている気がする。
 第三者を巻き込む虞の存在をあらかじめ告げてしまう今回の話は、その意味では親切というか、ちょっとヌルいよなぁ…

 Season1のは、普通の推理モノのように事件の解明を称えるわけではない、苦い終わり方だったが、今回は、組織を壊しかねない不正の暴露には関わりそうもない小野田官房室長や内村刑事部長まで担ぎ上げて、特命係側に勝利(?)を与えるシナリオになっている。
 小野田や内村が、理由はどうあれ、“こっち側”の人間になる、っていうのは、そうなる理由(というか右京と小野田の誘導の仕方)も含めて面白いなぁ~

 「ハトのえさ」を使った、仲違い中の薫と美和子との仲の改善に向けた布石も、なかなかに面白い。
 前回のDVD感想のときは、砂本脚本のときだけこの二人の関係がドラマ的に充実した描かれ方をしている、と書いたけど、今回は櫻井脚本の方が充実している。

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