あっ、しまった…
同じ本2巻買っちゃった!
重度のオタクカスタマーにはよくあることだと言われている現象だが、まさか自分の身に降りかかってくるとは!!
…しかしそれは、いろんな種類の本を大量に買い過ぎてて、そりゃあ何買ったのかなんて分からなくなっても不思議じゃないわなー、という状況下で起こることであって、ほとんど決まりきった少しの作品しか買わない私は、つまり……(汗)
まぁ、いずれにせよ、古本屋の105円コーナーで買ったから、被害額(笑)は少なくて済んだが。
それに山岸コナンだったら2冊持っててもいいよね!
『週刊少年サンデー』に連載されてる本編とは別に、アシスタント連中の執筆で『小学1年生』~『小学6年生』に連載されてる『名探偵コナン特別編』。
オフィシャルで認められた同人、という感じか?(笑)
(いや、雑誌編集者や原作者との折り合いもあるだろうし、別に自分の趣味で好き勝手に書いてるわけじゃないから、同人誌と同一視はマズイだろうが…)
他の『特別編』は、『コナン』、あるいは推理モノ初心者の子どもが読んでも理解に困らないように、登場人物のセリフや性格が、ステレオタイプ的…と例える以上にかなり単純化されている(深いところの事情は一切語られない潔さ!)のだが、山岸コナンは一味違う。
いや、違うどころか、下手をすると本編さえも上回るかも…!!
「闇に蠢く影」は、特別編では珍しい3部構成。そして前編は、レギュラーキャラがまるで登場せずに話が始まって進んでいき、主人公のコナンがラストの1コマしか登場しないという意欲的な構成!
おまけに、真夜中に停電した山奥の山荘が舞台なので、全編にわたって黒ベタと濃い目のトーンが塗りたくられていて、影の使い方が意欲的な画面構成であるし。
「名探偵がいっぱい」は、3人寄れば姦しいオバちゃん連中が事件に興味本位で割り込んできて引っ掻き回すという、いろいろな描写が淡白な『コナン』にしては異質な“キャラもの”の話。
子どもの姿だからだとか時にケガをしていたりだとか、コナンが事件を捜査したり推理を伝えたりすることに難儀する話は少なからずあるけど、そんなことには及ばないバカバカしい理由でもって妨害されるという話を個人的に一度は見てみたかったので、この話はそんなオレに良し!
他の話に比べて「ウヒョ!おもしれー!!」というレベルではないのだけど、目の付け所がいいなァ~、と思う一編。
「顔のない殺し屋」は、コナンがマフィアの暗殺者と対決するという、トンデモコンセプトだが、それをトンデモと感じさせないテンポの良さに、コナンと暗殺者双方が知略を尽くしてせめぎ合う様子が場面に迫力を与え、それでコナンに勝利を与えるファンタジー的なオチは、“暗殺者は普通子どもなんか狙わないので勝手が違う”、“今回ばかりは事情が違ったのでなりふり構ってられなかった”という理由があることを補完できるようになっていて、リアル寄りの話にしてしまう手腕が素晴らしい。
「死のトラップ」は、話の始めから犯人が捕まっていて、死が迫っている被害者がどこに隠されたのか捜査する話。
前後編でもないのに、構成のうまさといい、各シーンに込められた意味の濃密さといい、一つの映画を見ているかのような充実感がある。
推理モノというよりも、タイムサスペンスが含まれた社会派人間ドラマという感じ。大人しく寡黙な犯人が漏らす言葉の一つ一つの重さ、手がかりがほとんど掴めずに進んでいく絶望的な展開、などなど。
捜査に身分不相応に助言しすぎて刑事に「これはガキの遊びじゃないんだよ!」と至極もっともな怒られ方をしても、「勘違いなんかしてないよ。僕は浅野を殺人犯にしたくないだけだ」というコナンの青臭いセリフが、これほど救いのある言葉になるのも珍しい。
コーヒーカップの波紋を犯人が回想していることを示唆する記号に見立てたり、カメラや編集を意識した描き方もやはり意欲的。