福田監督が、奥さんである脚本家のワガママを聞きまくって、トンでもねぇ仕上がりになってしまった『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』から2年…
「人種差別を元にした戦争」という現実的な問題を深刻な表情で掲げながら、あまりに理想論的な方法をゴリ押しして割と幸せに解決してしまった上、続編ではその理想論すらも、身内重視の好戦的な行動で矛盾が生じてしまうのだが、「主人公たちがやっていることに間違いはない」というスタンスは絶対揺るがず、ついでに兵器のコンセプトや運用方法、作戦の立て方があまりにもバカだったなど、内容的にトンでもなかったのはもちろんだが…
いろんな脚本家に頼んでるのに、「私のアスランはこんなセリフ言わないわ!」などなどの理由で仕上がった脚本を突き返し、さらにリテイクされたものまで自分で書き直すものの、恐ろしく遅筆、というシリーズ構成担当のせいで、プリプロダクションが遅延。作画作業に入れず、仕事できない原画家の拘束料金が発生。決定稿が出来上がった頃には納品締め切りが迫っており、急いで仕上げるために、脚本をビリビリ分割して絵コンテを複数人で分担して作成。原画家も追加で大量に呼んできて作業スピードを上げ、それでも間に合わない部分は“回想”という名目で過去の映像を編集して垂れ流し、そうして何とかフィルム完成させたものの、当初予定の倍の予算がかかっていた、という、制作側から見てもトンでもなかった…
…というウワサもあった。
DVDやプラモ、キャラグッズなど関連商品の売上げ的には成功したが、「真っ当なスケジュールで作れていれば、もっと利益上がったのになぁ…」という思いは、上層部にあったに違いない。
劇場版の進展情報が1年経っても全くなく、予算集めできてるのかすら怪しいのは、その辺の事情かも。
…というわけで、福田夫妻に牛耳られてる感もある『ガンダムSEED』シリーズを放っておいて、新シリーズ『ガンダム00(ダブルオー)』の開始である。
舛成監督作品や谷口監督作品、『ガングレイヴ』、『ハチクロ』や『おお振り』などで定評がある黒田洋介をシリーズ構成に据え、『シャーマンキング』、『鋼の錬金術師』、『大江戸ロケット』で卒のない仕事ぶりを見せた水島精二を監督に迎えて、実制作のブレインスタッフ的には磐石な布陣を敷いた今作。
とはいえ、商業的には成功だった『ガンダムSEED』が築いた路線を引き継ぐことは間違いなく、そうなると実際に作品の方向を決めるプロデューサーらの声が色濃く出て(=実制作スタッフの色が抑制されてしまって)、結局『SEED』と同じような仕上がりになってしまうおそれもあったわけだが。
実際に第1話を観てみた感想は、期待してもいいかな、という感じ。
まぁ、開始前から期待していたんで、ハナっからひいき目に観てたから、というのもあるんだけど。
冷静に見てみれば、第1話の割にはスッキリとした説明がなされていなくて、個々の事件や人物の目的が不明確で見通しが悪いし、複数視点によって混乱する内容であるかも。特にラスト1分で登場人物が一気に顔出ししてきたのには、あまりの人数の多さに、それ、なんて『無限のリヴァイアス』?(笑)
『SEED』の第1話も、複数視点で話が混乱しキャラも掘り下げられておらず、おんなじような感じだったけど、よくよく考えてみれば、『SEED』の場合、ガンダム接収のための中立国襲撃というひとつの事件に全ての視点を集約していることで、視点の拡散が緩和されていて、それに主人公は何も知らない普通の学生で、視聴者と同じ立場にあったし、さらにラストには、「かつて親友だった二人が敵同士として再会」という(一応の)サプライズが待っていて、上手いこと話がまとまったような気にさせてくれた上に、話題性や視聴続行のフックとしても機能していた。
そう考えると、当時の話の薄さも、メイン視聴者の年齢を下げるための工夫に感じられ、 『SEED』は『SEED』なり頑張ってたんだなぁ、という気になってきた。
それと比べると、『00』は割とハイティーン向けになっているように見える。
あと…
『SEED』には、「新世紀版のファーストガンダムを作る」という目的がまがりなりにも存在し、実際に内容も途中までファーストガンダムをなぞってる感があったので、『機動戦士ガンダム』というブランド名を冠する理由が存在していたけれど、『00』の場合、『ガンダム』って雰囲気はあまりしない気がする。他のロボットアニメからアイディア持ってきている感じ。
まぁ、『ガンダム』っぽさというのも、平成ガンダムを経た今となっては、ガッチガチなものではなくなっているので、それでも良いとは思うけど。
それに、主人公がテロリストというのが『ガンダムW』っぽいので、そういうリンクで『ガンダム』を冠する意味が遡及できるかも。あるいは、大国を相手にする第三勢力という主人公陣営の設定を、『SEED』のオーブ・アークエンジェル組の役目を引き継いだもの、と見なせるかもしれない。
個人的に、『ガンダム』ブランドの保持にはあまり関心がないので、面白くなってくれればどうでも良いけど。
「武力抗争を武力によって根絶する」という矛盾に満ちた目的のために主人公たちは動くことになるが、この矛盾がいずれ主人公たちを苦しめていき真の答えを求めさせるという流れになるのか、はたまた、矛盾を抱えたままそれでも戦っていく主人公たちの姿を描くのか、どっちの方向に進むのかちょっと注目。
そして…
分っかりやすくこの衣装に釣られて、個人的に大注目(笑)
えっ? でももうチャイナ服着ないの?