今年の『大晦日だよ！ドラえもん』への感想

　去年のバラエティ化特番が悲惨で無残な結果に終わったことから、今年は存続すら危ぶんでいた「大晦日だよ！ドラえもん」だけど、何とか首の皮は繋がったようで、去年と同じく２時間に縮小しての放送。
　というか、リニューアル直後でストックないのに、大山時代と同じ様に３時間ＳＰ続けてた一昨年の方が狂気の沙汰だったわけだが。

　今年の目玉は、ＳＰの半分をかけて描く新作「ドンジャラ村のホイ」。
　原作通りにアニメ化してたらどーやっても1時間も持たないので、オリジナル要素多数投入。半分ぐらい別モノになってる気がする。
　まぁ、しずかちゃん・ジャイアン・スネ夫が参加してくるという改変のは、アニメ版の定石（※大山時代の）なのだし歓迎なのだけれど、藤子作品の典型的な一般服で描かれていたホイたちの衣装を、わざわざアイヌの民族衣装っぽいヤツに変えたことが腑に落ちない。
　去年のＳＰ回（ドラミ回）は劇場版っぽく全部過去世界の異国の話だったし、ＳＰ化するには何でもかんでも異世界や異文化にしないと気がすまないのか!?
　なんか、劇場版コンプレックスみたいで、嫌だなぁ…

　だから、こんなところで「のび太たちが小さくなる大長編的な大冒険」ネタを出したということは、リトルスターウォーズの再映画化は絶望的かもしれん、とか思った。（…まぁ、再映画化で過去の良作に泥を塗られるのは真っ平という人も多いだろうケド）

　でも、そういう気負いを感じる割には、後半から絶え間なく続いていくアクションの個々のアイデアが有機的に結び付いていなくて、『トイストーリー』の劣化版みたいな感じになってたのは、なんだかなぁー
　ＴＶ版だから、別に作画もアイデアもアクションが冴えてなくてもいいけど、『ドラえもん』のキモであるドラマ部分がイマイチなのも、なんだかなぁー、な気にさせられる。
　小人族の長老がのび太たちを「我々を苦しめてきた大人族の一味だから」と無闇に敵視するのは、ドラマ作りとして安易といえば安易だが、まぁパターンとして許容できるとしても、そこから和解する理由が、散々時間を費やしたアクションシーンの結果から「彼らは小人族（クン一人）のために頑張ってくれた」と感動して……とかだったら分かりいいし、アクションシーンの存在理由も着地させられてるけど…
　その後で小人族の村を壊しまくってたショベルカーに事故で閉じ込められた作業員をのび太たちが必死に助けている姿を見て、感動したからのび太たちを信用した、というんじゃ、長老がのび太たちに心を閉ざした理由と開く理由がちぐはぐじゃないか！

　ただ、結論はそれなりにうまくアレンジできていたと思う。
　原作のラストで小人族がアマゾンに移住したことで安住の地を得てハッピーエンドを迎えるのだが、その後大長編『雲の王国』で、アマゾンにさえも開発の手が及んでしまい完全に住処を奪われた、という話を経た現在、原作通りのアマゾン行きによるハッピーエンドではなく、新しい解決が必要になっているので、どういう結論を出すのか注目していたんで、水のきれいな地にしか留まらない蝶の話を中つなぎにして、過疎の村に落ち着いたのは、うまいことやったなぁ、と感心した。
　都市近郊では宅地・商業地開発が盛んで、人も数も多くて、「人間だけの楽園」が作り上げられているのだけれど、それ以外の土地はその人口・経済集中の煽りを受けて、開発もままならない（政治的な施策として“人の手が加わらない”）ほど廃れてしまっている皮肉を突くという、「格差問題」が声高に叫ばれている今だからこその社会的な問題提起にもなっている、という優れた部分もあるし。

　「ホイ」以外の短編は、まぁ普通。
　「天井うらの宇宙戦争」の再放送は、声優の若々しさが懐かしくて逆に新鮮な気分になったけど。
　地蔵様のは、元々原作の話も良かったので、素直に面白かった。
　ドラえもんがねずみ年に恐怖するのは、今年しかできないネタだよなぁ（12年前は、「お正月だよ！ドラえもん」の幕間の時間で、話題にしてた）