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Take@管理人が、知ったかぶりのテレビ番組批評やとりとめもなく面白くもない日記などを書く、オタク臭さ全開のくどい不定期更新ページ(泣)
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 「『TRICK』の脚本が話を書くが、演出をするのは堤幸彦ではない」
 …という前情報を知っていれば、容易に想像できる仕上がり。
 堤幸彦特有の遊び演出がなくなっていて、しかし遊びがあったせいで漂っていたストーリーのイマイチ感とグダグダ感は解消されておらず、何もかもが中途半端な作品になってしまった。

 石原さとみ演じる、金にがめついくせに英語が全く出来ない英語教師が、二重性格を利用しながら謎を解いていくという、大雑把に言えばそんな話。

 ふだん土曜ワイドとかでマジメにドラマを撮っている演出屋が、がんばって『TRICK』っぽくしているように感じられる。
 それはそれで、「どうやればその作品の演出のように見せられるか」というのを作品からちゃんと技術的に分析していて、ちゃんと再現して見せられるという演出技術力の高さを示しているのかもしれない。(編集かカメラマンが『TRICK』と一緒なだけかもしれんが)
 固定位置から撮った映像をジャンプカットで見せて時間経過を伝えるやり方とか、ボケが炸裂したら短く甲高いBGMが差し込まれるとか、ちゃんと『TRICK』の演出になっている。
 しかし、ところどころでマジメっぷりが漏れている。
 最初の剣道部の練習風景を映すところなどでは、“順当に”1ショット2秒ぐらいかける短カットとか、移動カメラで全体の様子をちゃんと見せていくところとか、なんでもパッパッパッと見せて流してしまう『TRICK』らしからぬ丁寧さがある。

 そのマジメさが悪影響になっているのが、笑いの演出。ことごとくそのシチュエーションから生まれるだろう笑いのツボを外している
 例えば、夕方に「待ってて」と言われて、寒い真夜中まで待ちぼうけを食らうというギャグの部分。
 ここは、夕日の中でウキウキと待っている男子学生連中が、次のカットでは凍えながら、あるいは無感情で突っ立って「もう終電過ぎた…」と力なく呟いて、そのカット繋ぎのギャップで笑いを取るべきところ。
 でも実際には、散々待たされた風でもなく、むしろ「なんか遅いよねぇ~?」と余力さえある普通の演技で撮ってしまうマジメさ。
 この手のギャグは、ちいと様式めいているから、土曜ワイド的な笑いの取り方では合わないんだよなぁ…


 演出はまぁ仕方ない部分もあるとして、脚本の方ももう少しマジメな演出家スタッフに歩み寄ってやればよかっただろうに…

 たぶん、『TRICK』後期のゆるゆる世界観であれば許容されたであろうトリックも、この演出の語り口では単に「甘い」だけ。
 「密室かと思ったけど、こんなところに隠し部屋が!」というトリックも、「これで犯人の姿が消えた謎は解けるが、この後一体どうやって脱出するんだろう?」という二重トリックかと疑わせる謎をわざわざ出してきた直後に、「こんなところに出入り口に使えるトコが!」と安易に解決してしまったり。
 最初の暗号トリックも、爺さんの書いた英文の暗号をなぜ強引に日本語で読まなければならないのか、という肝心の解き方の理由・根拠が説明できていなくて、単に英語ができなくて何でも日本語で考えてしまう英語教師という主人公の設定を活かすためだけのものにしかなっていない。
 これを例えば、「あの年齢のジジイに、英語がわかるわけないだろ」とでも何でも理由を付ければ、多少はマシな暗号になるだろうし、その後生徒に「なるほど、年齢が近いから同じ発想で解けたんですね」とでも言わせて怒った主人公に威圧させれば、キャラで遊びながらストーリーを紡ぐこともできただろうに。


 そもそものキャラ設定にしたって、いろいろとウケた要素・ウケるであろう要素を組み込んで作ってるんだろうけど、逆に組み込みすぎて、何かあまり巧くギアが噛み合っていない感じがするものに仕上がってるような…
 なぜ主人公の性質を、『TRICK』の山田と上田のキャラクターを一緒くたにしたようなものにしてしまったのか。
 あれは、博学で小心者の教授キャラである上田を、学はないけど頭はキレる山田がフォローするという逆転現象、そして時に山田の知恵が及ばない部分を上田が博学でカバーする、というバディムービーとしての役割分担が基本を抑えられていて、なおかつバランスがいい具合に取れているから面白いのに。
 石原さとみが一人で、上田のように物語が始まるきっかけを作って牽引し、山田のように謎を次々と解いていき、上田のように虚勢を張って周りに迷惑をかけ、山田のようにがめつさを発揮して失敗し、しかし上田のように巧く立ち回って立場を良くする、という『TRICK』の面白いところの役割を担っていて、お付きの生徒たちの意味があまりなく、面白くない。

 それに、主人公らしからぬ金へのセコイがめつさというのは、『TRICK』では山田が万年崖っぷち金欠の貧乏キャラという同情できる背景があったから許容されるものなのに、『パズル』の主人公はあの外ヅラの良さで順風満帆そうに見えるから、いまいちキャラ設定にノれない。
 いや、同情できる背景を作る必要は実はなくても良くて、臆面もなく堂々とがめつさを発揮するような、感情移入不要の超人キャラクターにしてしまえば、「そういうキャラなら仕方ない」と納得してもらえるし、「どこまで傍若無人なんだろうか?」という期待感による面白さも出るだろう。
 そこまで精神的に無敵だと話を転がしにくい、ドラマの登場人物たるもの何か一つは弱点を持っていなければ……というのなら、散々無敵っぷりを披露してある程度物語が進んだ後に、ふとしたきっかけで「アレ? 先生ひょっとして…」と弱点が発覚する、という流れなら、第1話のキャラ紹介話として順当な仕上がりになるのだが…
 出てきてすぐに弱点が露呈していて、事あるごとに相棒役の生徒たちからつつかれていて、傍若無人キャラの権威がなくなっているのがなぁ…

 とにかく、生徒役の役割が、頭いいクセしてボケ担当なのか、傍若無人の主人公に対するツッコミ担当なのか、その二つがうまい具合にミックスされたキャラなのか、はっきりしてくれないとどうしようもない。
 3人もいるんだから、何とかしてくれ!



 でも、続けているうちに役者や脚本や演出がノってくる作品ではあると思う。
 そこまでいけば、この番組独自の面白さというのが出てきて、見ていて楽しくなってくるはず。
 だからそれまで、個人的にはサヨウナラ~

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