ふはははは、映画に行くのがだいぶ不安になってきたぞ!
映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』公開に合わせての新撮テレビスペシャルが放送された。
これで映画公開への弾みをつけたい感じなのだろうが…
弾みになるどころか、個人的には意欲がだいぶ下がってしまったとさ(汗)
今回の新撮テレビスペシャル『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』は、全編通してギャグ、という感じで、元祖テレビシリーズの「第2話 愛と復讐の宅配便」のコンセプトに近い作り。
それはそれでいいんだけど、今回のスペシャルは、話の流れに芯らしい芯が見えなくて、散発的にゴチャゴチャとギャグを飛ばしているような、締まりのない話だったなぁ、という印象。
…まぁ、「話に芯がなくて散発的にギャグ飛ばしてる締まりのなさが、いつもの『踊る』じゃないか」という意見もあろうが(汗)
ただ、今回のは、単に芯がないというのではなく、「はい、じゃあ話のココでギャグ入れまーす」「話のココでこういうエピソード挟みまーす」というタイミングが、完全に間違えているのではないか、と感じたもので。
強盗傷害事件発生!ということで湾岸署刑事課主導で捜査始めようとしている直後に、「事件より冠婚葬祭」と魚住課長への事件報告を遮られて、王刑事の結婚式の準備の話を真下署長に振られたらノリノリで準備状況の報告をワイワイ始める青島以下刑事課強行犯係の様子を長々と描写して、「事件の捜査はどうすんねん」と強く印象付けてしまっていたり…
殺人疑惑が高まる事件が起こり本庁も乗り出しての共同捜査がいよいよ始まりそう!とテンション上がりかけた直後に、署員の誰もが揃いも揃って結婚式の出し物の練習してる風景を事細かに長々のんびりと描写して、「事件の捜査の話を進めてよ」と思わせる順序になっていたり…
本庁の刑事と一緒に捜査してきて帰ってきたら、披露宴の料理の試食会をやっていたので、捜査報告もそこそこに「うまそう!」と試食会の方に向かっていき、本庁の刑事はまじめに話し合っているのに、料理に興味津々の湾岸署刑事課組を映してて、「これじゃ“所轄のクセに”とか本庁に言われても文句言えないぞ」と思わせる描写になってたり…
真下新署長と神田前署長の派閥争いの話は、なんかのエピソードの合間合間に細切れに入れておいても良さそうなのに、途切れずに延々と話が続いたり…
「こんな時に何ですが…」という真下のセリフが至極ごもっとも過ぎる、犯人が現れるか否かの一番緊迫する場面…劇中の登場人物的にも最も集中しなければならないタイミングで、室井とすみれのお見合いを始めたり、そのお見合いの中身があんまり厚みも面白みのないものだったり…
神田前署長が出てくるタイミングなんて、全シーンが話の波に乗れてないからね。ただでさえ出てくりゃ浮くキャラなのに、浮きっぱなしだからね。
とにかく、それまでの話の流れの腰をことごとく折るようなタイミングで、違う話題に突入したり、あるいは特定の事柄を長々と描写したりするもんだから、観てるこっちのテンションが乗っていかない。
というか、何かと慌ただしい湾岸署―たとえば、『歳末特別警戒SP』では年末で大小の事件・事務が入り乱れる、『THE MOVIE 1』では3つの事件が同時進行、『THE MOVIE 2』ではお台場の観光地化でそっち関係の仕事が増加、『THE MOVIE 3』では庁舎引っ越し作業―において、今回慌ただしくなってる理由が、“結婚式の準備”、というのが、個人的に気に食わない、という事情が大きいだけかもしれないが。
他の回での慌ただしさは、一応は警察の業務に関連して忙しくなっているのに対して、今回は、いかに政治的思惑が絡んでいるものであったとしても、結婚式という個人的な行事、警察の業務とは特に関わらない事柄で忙しくなっているので、「事件起こってるのに、そんなことしてる場合か、しかも必要以上に派手にやりすぎ」という思いを強く持ってしまう私なので。
湾岸署のみなさん、仕事してくださーい!
まぁ、やりたいことは分かるんですよ。
このギャグをやるためには、このシーンの前までにあのエピソードが欲しい、とかの打算などで、話の順序をこうせざるを得ない部分があるということとか。
王刑事の結婚、夏美の育児の悩み、室井とすみれのお見合い、ラストで青島が強行犯係を家族にたとえて説得する、などのエピソードが出てきているので、プロデューサー・脚本家・監督らのブレインストーミングの段階では、「家族」をテーマにしよう、それをテーマにして話にまとまりを付けよう、最後に「家族」としてまとまるような話なら、その前段階では強行犯係の気持ちをバラバラにしてラストへのタメをつけよう(警察辞めようとしてる栗原や、青島の押し付けにうんざりしてる和久くんのエピソード)、というような話が出ていたであろうことは想像に難くなく、チェック機能は働いているのだろうが…
でも、ラストの青島の説得で家族のたとえ話持ってきたのが唐突と感じられることからも分かるように、各要素がラストに向かって有機的に繋がってる感がないようでは、いろんなエピソードを出してきても、全然意味がない。
今までの『踊る』で、上に挙げたような不満点になるようなことを全然していなかったといえば、そうでもないのだけど…
今までは「本庁から上から目線で仕事を取り上げられて、不貞腐れる以外にしようがない湾岸署」という青島たちの立場があったから、事件の捜査とかが進んでいる裏で湾岸署側がギャグやってても、そこまでではなかったのだが。
あるいは、例えば『THE MOVIE 1』で、青島が事件の捜査そっちのけでレースクイーンたちと会って鼻の下伸ばしてる弛緩シーンがあっても、その直前のシーンで青島が真下や雪乃さんが捜査している場面を描いていて、青島以外にちゃんと別の人が動いている・真面目に仕事を進めている、という引き締めシーンを入れているので、ギャグシーンがそこまで不快にならなかったり。
今回はそういう方面の打算があまり見えないからなぁ…
制作側のまとめ能力不足というところもあるだろうけど、脚本や準備稿段階では話のつじつまが合ってたり流れが自然だったものが、役者のスケジュールの都合が合わなくて撮れなくなってきたシーンとか、スポンサーから突然ゴリ押しされた展開を捻じ込まなくてはならなくなったりして、最終的におかしくなっている部分もあるだろうから、あんまり制作側を悪く言うべきではないのかもしれない。
…まぁ、そんな不満がありつつ観てても、その一方で、今回の話を楽しんでいる私がいたりもするのですが。
テレビシリーズではヒラ刑事・係長だった真下・魚住が、今回から署長・刑事課長に立場が変わったことによるエピソードとか、袴田課長が副署長に昇進し、神田署長・秋山副署長が退職して指導員で再雇用されても、相も変わらずのスリーアミーゴスだったり、新スリーアミーゴスが結成されたりと、テレビシリーズからの時間の積み重ねを経てのエピソードとか、私の好物です。
乗り気じゃないすみれさんにお見合いさせようと、署長権限振りかざして凄んで見せるものの、すみれさんに「(後輩のクセに)タメ口かよッ」と凄まれたら、一瞬にして立場逆転、なんて小ネタは、まさに今回見たかった内容だからね。
どうも容疑者と会っていたことを隠してそうな署員がいそうな中で問いただすときに、「よしみんな目をつぶれ。今君たちのことを見ているのは先生だけだ。会っていた人は手を挙げて」とか言い始めた真下は、それじゃあ真下やのうて『平成教育学院』のユースケ先生だよ!…とツッコミたかった(笑)
室井から青島に、王刑事の結婚式の進行についてという、仕事外の話題について、電話で軽くやりとりしているところは、室井が出世していても、テレビシリーズ時からさほど変わらぬ関係性(「秋の犯罪撲滅SP」でのセリフに当てはめれば「腐れ縁」?;笑)が続いていることが感じられて、何だか嬉しかったり。
『~THE MOVIE3』では、演者(織田裕二・柳葉敏郎)の不仲のせいか、青島と室井の絡みが極端に無かったので、制作側は何とか二人を顔合わせさせずに以前から関係性を壊すことない雰囲気の話になるよう、調整に苦労したんだろうなァ、と勝手ながら思ってしまったのだが、直接役者が顔合わせなくても、現代ならばこういうケータイとか便利なツールがあるのだから、今回みたいな感じで活用して絡みを作れば良かったのに。
松本サウンドと菅野サウンドが入り乱れて聞こえてくるのは、なんか凄いものを聞かせてもらったような気がする。まぁ、判別できる私も私ですが。