特にファンというわけではないのに、なんでこの監督作のことを積極的に見ようとしているんだろう私…
…という感じで、長らく映画『ドラえもん』の中編監督・本編監督をしていて、シンエイ動画から退社してフリーになったという渡辺歩監督作を見た。
しかも今季、2作も監督をしていて、UHF局深夜アニメの『謎の彼女X』と、キー局日曜朝放送の『宇宙兄弟』。
…なぜ、こんな両極端な作品の監督してるんだ?
『謎の彼女X』は、『ディスコミュニケーション』『夢使い』で、背景への細かい(一部は病的なほどの)書き込みと、フェティッシュな恋愛・性愛を扱っていた植芝理一原作の、「よだれを舐める」とかいう会話や描写が頻繁に出てくる、どー考えても見る人選ぶだろというフェチアニメ。
『宇宙兄弟』は、宇宙飛行士になった弟の後を追って、中年入りかけの冴えない兄が宇宙飛行士を目指す、という日曜朝のアニメには不釣り合いだが極めて一般的な、オジサン主人公のアニメ。
どーにも強力なセールスになりそうもないアニメを収益ラインまで持ってけるように一般化ないし一般的要素を強める作業と、あまり日曜朝には向かないオジサン作品を幅広く見てもらえるように演出する技術が要る、というようなことを考えれば、アニメ化の作業としては似たような範疇に入ってくるのかいな?(汗)
長らく『ドラえもん』で一般向けの演出をしてた渡辺歩の面目躍如というところかも。
シンエイ動画の豊富な作画リソースがない状況で、真価は発揮できるのだろうか、と思わなくもないが、ただ、この人は作画を省力できる同ポジ演出も多用するからな。
作品のカラーが違うし、私の審美眼もかなり下の方なので、『謎の彼女X』と『宇宙兄弟』の両方を見て渡辺監督の演出特色みたいなものを見つけるのは難しいんだけど、強いて分かるといえば、両作品ともモブの動かし方に気を使っている気がする。
『謎の彼女X』は、個人的にタイトルが『遊星からの物体X』を思い起こさせて、なんか不穏な空気があるべき作品に思えてしまうのだが(汗)、アニメに関しては不穏な空気などなく、ねちこいフェチ描写も原作が扱ってる題材の割とあっさり目かもしれないと思ったものの、ただ、前の『夢使い』のアニメがアッパッパーな出来だったからなァ、それを思えば及第点なのでは?
『謎の彼女X』EDは、眠っている女性たちの艶かしい姿態を映していくという仕様だが…
よだれ、自重しろ!
『宇宙兄弟』は、全体にコミカルな演出も巧い具合に作用してるのだろうけど、主人公のムッタを演じる平井広明が『TIGER&BUNNY』同様、憎めないオッサン主人公を好演しているお蔭で、見やすいシロモノに仕上がっている。
宇宙飛行士試験の様子は、先行作品に『ふたつのスピカ』、『プラネテス』という、これよりもっと詳しく、より過酷な試験の様子を描いたものがあるので、それと比べるとドラマ性が薄い気がするな。
3話で女性キャラの描写やカメラワークが妙に艶めかしくって、「あれ、渡辺監督ってこんなコンテの切り方できたって?」とか思ったが、エンドロールみたら、絵コンテが望月智充だった(笑)
フェチつながりで、『謎の彼女X』の方に行った方がいいんじゃないか、望月智充!…とも思ったが、望月智充のはもっとライトな感じのフェチ演出だし、あと、『ふたつのスピカ』の監督もしてたので、そっちのリンクが。