前回の続き。
クリルは「小さな村の一日」のストーリーの中で機能するように、性格などをデザインしたキャラクターです。
その機能というのは、「オーガが片思いをして、気に入られるために行動することで、物語が動き出す、その契機の存在」というもの。
で、もうちょっと具体的にオーガの行動理由は考えた際に、「落ち込んでいる娘を元気付けようとする」というシチュエーションを当てはめる、と決めたのです。
だから本編でのクリルのアイデンティティの重要な部分、というか唯一の点というのは、「落ち込んでいる状態であること」というわけで、本編でもその設定でずっと通っています。
イラストでもニコニコさせないことは、キャラ設定の同一性を保つために必要なことだったわけです。当たり前ですな。
んで、クリルマスコット化計画に傾倒しすぎてキャラ設定を忘れてたのは作者のみという…(泣
しかし最初のデザインの段階でも、クリルは「マスコット扱いの存在」として考えていた気はするので、クリル設定とマスコット素質は親和性があるんですがね。
モンスター中心の話なのでゴツい奴らだらけになりそうだから、紅一点、という感じのキャラを出した方が見栄えするだろう、という概算があったんです。
だから「マスコットページに置ける」と思ったわけですが。
では、なぜ植物系のモンスターでなければならなかったのか。
モンスターやクリーチャーといえば動物ベースのものが大半で、多くは凶暴でパワフルであり、すなわち男性的な要素が含まれています。また、動物は基本的に人間の敵です。熊や狼といった肉食動物は脅威の代表格だし、馬や鹿のような草食動物も後ろ脚や角の攻撃の危険性が常にあります。
対して植物は、人間に危害を与えることはありません。そもそも動物と違って能動的に働きかけてくることがない。毒のある植物はあっても「襲って来る」ことはないのです。この点で、人間は植物に対して無条件に警戒心を解くことができる。小さいものと並んでマスコットの要素として適任です。
集合して森とかになると話が変わりますが、その場合の植物には母性的な要素が見出されます。大地や森林など人間の生活を支える巨大で無危害な存在は、古代よりその包容性が母性に例えられてきました。ギリシャ神話の大地神デメテルは女神だし。
ですから、紅一点のマスコット的キャラ、を植物モンスターにしたのです。
…とか言いつつ、よくよく思い出してみるとそんな小難しい理由ではなく、単にクリルの原型が「ドラゴンクエストⅥ」のモンスター「きりかぶこぞう」だっただけのような…
←きりかぶこぞう
ファーラット共々、戦闘動画でくるくると動く様が可愛いくて印象深かったので、自分でも似たのを登場させようと思った気がしますわ。
そんな印象を引きずっているので、最初のクリルのラフデザインというのが…
和式小僧的モンスターの代表格である「座敷童子」みたいに、べべ着てるような状態になってます。
頭が切り株状というのは元ネタそのままやね(意識してなかったけど)
後述しますが、この段階から目の部分は黒目と眉(のようなもの)のみの構成で、瞼の存在は考慮してません。
眉と黒丸の瞳、という単純な目の描き方は、アンパンマンやハローキティ、ミッフィーに繋がるもので、小さい子が好む小さいキャラ、というイメージを引き出すものですから。
そして、本編に出した決定稿デザインは…
一部改修しながら、ラフ原をそのままトリミングしたもの。
モンスターなのに服みたいなものを着せて文明的に見せてはマズい、ということで、野性っぽく地肌を出したデザインにした……ような気がする。
…どちらかというと「ちゃんちゃんこが田舎臭くてダメだ~」という理由で取り外したという方が事実に近かったかも。
ちなみに、今のマスコットデザインと違って本編では、クリルの頭頂部がちゃんと切り株っぽく直線的になってますな。あと、手の長さが足の付け根ぐらいまで。
…って、本編中でもかなりデザイン変わってたりしますがね(汗)
テキトーに作るって、なんて恐ろしい…
そして、この本編の原稿を『FANTASSICA』に出す時に、ミヤとクリルでのキャライラストを描いて、ここでクリルのカラーバランスが大体決まる。
…まぁ、後のと比べるとところどころ配色変わってますが(汗)
この絵の説明につけたように「本編ではありえない光景」。
ミヤがクリルをボコボコにしまくるような関係性のまま表現しては、イメージイラストならともかく、キャライラストにならないので、関係性とキャラ設定をイラスト限定と割り切ってアレンジしたわけです。(結構早くからキャラ設定が崩れているなぁ…)
そしてこの処置が、マスコット的な扱いをさらに顕実化させることに。
その後、ちょくちょくクリルをネタにイラストを描き続け…
当ホーメページのマスコットキャラに起用。
この間、元々ペンギンを意識して描いてた平たい手が、さらに長くなって本物のペンギンに近くなってきてます。
この時点で、クリルの表情はキャラ設定に従順なものではなく、マスコットとして相応しいように笑顔で描いています。
そりゃ、「ようこそ!」なんてフキダシのついたマスコットなんだから、キャラ設定通りの不安そうな表情で描くと「アンタが来たのでなんか不愉快、不安」みたいな感じになってしまうので、それはマズい!
例えばコンビニ入った時に、満面の営業スマイルで「いらっしゃいませー!」と言われた時と、無表情でボソボソと「いらっしゃいませ~」と言われた時となら、どっちが嬉しいかと考えれば、そりゃ笑顔で迎えられたときの方でしょうて。
マスコットに求められるのはそういうこと。キャライラストでもそうだけど。
起用を決めた以上、クリルの方を「マスコットの規則」に合わせることになります。
(しかし現在の「ようこそマスコット」は、規則に従ってない奴の方が多い気がしますが…)
で、こうやって描き続けていると、気になってくるのが目のデザイン。
初心者ほど顔にデザインだけにはこだわるんでねぇ~……(泣
普段から瞼描き入れる画風で描いてると、時々瞼付けたデザインの方が良かったかも、なんて夢想しちゃうのですよ。瞼ある方が表情の機微を付けやすいし。
で、試しに瞼をつけてみたのがコレ↓
やり方もマズかったんですが、どことなく大人風になってしまい、マスコット(=子ども要素)的でなくなるので、やめた。
そして別の方策を採ってみるのです。
(ちなみにこの辺りから、手の長さは、地面につくぐらいのリーチで定着。)
別の方策というのがコレ↓
眉を瞼的に描いたクリルはこれが初めてです。目玉を囲うように眉を描くと瞼みたいに見える。
普段の絵柄が、瞼を目玉覆うように描いてるのでね、それに近くなると個人的に馴染みやすくなって好みだったり。
これにはマンガ的なデザインの特性である「線の多義性」が機能するのでしょう。マンガは完全な白黒の単純デザイン(=記号)の塊であって、普段の視覚と違って情報量が少ないので、描かれた数少ない線や点の意味を限定するか、複数の意味を持たせるかすることで、滞りなく読めるもの。眉であり瞼であるという両義性が何となく認められるのです。
これで何となく満足した私は、以後クリルの眉(のようなもの)を瞼に偽装してキャラクターを描くことになり…
そして現在に至るわけです。
で、ここから話の頭に戻って、クリルが如何様に物語に必要とされたか、みたいな「小さな村の一日」のストーリーを形成する段階の話をしてみたいと思ったのだけれど、また次回。
まぁ、練るといっても私の場合、どういう風に妄想が転がっていくか、という個人的な道筋を提示するだけであって、プロットやストーリーを作る勉強をした人なら
「そんなやり方が罷り通ってたまるか!おまえの構成の立て方は間違っている!」
と言いたくなることこの上なしの内容を晒すような気がして怖いんだけど…(汗)
しかし、いっぺん自分でもはっきりした形で表してまとめときたいしなぁ…