「昔アキラ、今キヨシ」な黒沢監督作品。Gyaoでやってたので観てみた。
この2作品だけ観てたら、なんで今「感動できるホラー」なんてシロモノを作っているのか謎だ。
それともアレか、誇大宣伝か?
なんでそんなことを思ってしまうのかというと、この人の撮り方って、徹底して登場人物を突き放した撮り方なんだよねー。
とにかくロングショット・ロングテイクが多くて、感情移入(観客によるキャラクターへの心理的接近)を阻害しているので。しかも割と重要な場面でもそれを連発するからなぁ…
『CURE』の方は、そうしたスタンスがいろいろと効果的だった。
でも仮にもヒューマンドラマの体裁を取る『ニンゲン合格』でも徹底して突き放した撮り方なんだよな。
登場人物たちがちっとも観客の側に近づいてこない。見てたら大体登場人物の前にオブジェクトを置いて、カメラと登場人物の間に物体的な距離を取っている(何度か出てくる家族団欒の食事シーンでも、カメラは家の外にあって、壁と窓柵が視界を邪魔する)。
終わり方を見ていると、その方針も分からんではないし、効果的でもあるのだけど、前半がどうもノレない。
主人公が10年の眠りから醒めるというこの作品の肝とも言える部分を、至極あっさりと描写して驚異をスルーしてしまうところからして、この監督、かなりヒネくれてるんじゃないか?
ただ、『CURE』はそんな文句が言えないくらい、本気で怖かった。
『降霊』以降この監督十八番の『リング』系心霊ホラーじゃなくって、人間心理をエグることで発生するテーマ的な怖さだけど、いやぁ~すごいすごい。
犯人の萩原聖人とと役所広司が留置所で直に接触するシーンでは、次に何が起こるのかという緊張感が度合いがすごくて、見入ってしまった。
終盤うじきつよしの「なんでだろう、分かんねぇんだよ」も狂気じみておって良い。
エンディングはホラージャンルの定石で「ワケ分かんねぇ」「そんなバッドエンドで良いのか?」というものになっとりますが(笑)