今回の話の感想を書く前に、まず芝山監督版の「きこりの泉」について語らせてもらおう。
原作のきこりの泉は園児向けのカラー漫画。「楽しい秘密道具紹介」といった趣で、登場人物が道具を使って楽しむだけの実にシンプルな話である。
実はこの話にスネ夫は出てこない。
スネ夫の登場は尺延ばしのためにアニメ版で付け加えられたオリジナルのエピソードでしかないのだが、これが良くできている。
というのも、道具使用の注意事項として明示されていたにもかかわらず、ストーリーに反映されなかった「嘘をつくと何にも貰えない」という設定を活かしているからだ。
原作ではしずちゃん宅で泉をジャイアンに奪われてしまうが、芝山版ではそこにスネ夫を加え、ドラえもんとのび太が逃げる途中でスネ夫に見つかってしまう、という流れになっている。
スネ夫は古くなったラジコンを泉に入れ新品にしようとするのだが、女神が持ってきた新品のラジコンを前にして「それボクのです。ちょうだい」と言ってしまう。当然新品は貰えず、元々の古い方も返ってこず、泉に入れれば自動的に新しいのが貰えると勘違いしていたスネ夫は怒り出す。
まんま童話「きこりの泉」の話なのだが、嘘つきのきこりの役をやらすならスネ夫が一番良い、と言えるぐらい二人の性格が実によく合致しているため、劇中でのスネ夫の扱いはまさにハマり役と言ってよく、この点が非常に面白い。
さらにこの後、腹いせに泉に蹴り入れた小石が、「あなたが落とした石はこの石ですか?」と言う女神によって大岩にグレードアップされて戻ってきてしまい、とっさに「違うッ」と真実を言ってしまったがために、頭の上から大岩を落とされる、という因果応報のオチを迎える。
腹いせに石を蹴るという至極“自然で何気ない行為”が、道具のもつ“当然の機能”で“意図せぬ惨事”に転化し、問いに対する“当然の返答”によって逆に身を滅ぼすという、この一連の流れが、人間の心理、道具の機能を非常によく活かしたものになっていて、面白い。
また、その他全編にわたる細かな演技・仕草の演出も特筆するに価することを付け加えておく。
この話がアニメ化されたのは、アニメ版の演出がノリにノっていた1980年代。
原作の道具設定・キャラ設定をうまく活かし補完したこのアニメ版は、原作を超えているとすら言える。
さて、そのように素晴らしいアニメ化がなされたという先例があるため、今回のアニメ版の評価は厳しいものにならざるを得ないのだが、今回のは今回ので、前作にはない良いところもあった。
まずは話の流れに従い、各所に軽く突っ込み。
>泣きながら喋るので何行ってるのか分からん、というか謎の言語を発する
…のはのび太の特権だったんだが、今回はドラえもんがやっていた。
こういう役割交代には面白いものがある。
>限定どら焼き
材料も最高級で、1ヶ月に10分しか販売されない……って、たかがドラ焼きのくせにどない仰々しいドラ焼きやねんッ!(笑)
ドラ焼きってどこ行っても売れ筋商品にはならないものだから、そんなレアなバージョン作ったって店側のメリットはほとんどないので普通は作らないと思うのだが、どうだろう?
>願い事に制限がつく:5つまで
要するに使い捨て品になったのね。
これで「きたないジャイアン」を泉から救出する手段がなくなったわけだ。
(何回でも使えたら、もし投げっぱなしのオチの後に話が続くとすれば、救出する手段なんていくらでも考えられるものである)
ジャイアン、永久に泉の中…
スタッフ、ひでぇ!(笑)
>巨大ラジコンロボ
すみません、オレも欲しいですッ!(笑)
この部分オリジナルだけど、古いものを新しくするのではなく、新しいものをより良い物にするという発想もなかなか良いなぁ
女神がボソッと「スイッチオン」って言ってるのがなんかステキに面白い。
>ジャイアンを助けるかどうか迷う
3人ともひでぇ!(笑)
でも個人的には、あんな真面目そうなジャイアンは逆にブキミだから要らないぞ(笑)
「きこりの泉」について熱く語ってしまったが、順番的にはこっちの感想を先に書くべきだったのさ(笑)
ゴメン、ころばし屋。
>のび太「こ、殺し屋ッ!?」
>ドラ「違う違う、ころばし屋」
のび太の仰々しいリアクションと至って普通に訂正するドラえもんの様子とのギャップが非常に笑える。演技派のび太。
その後の「プロだからね、確実に3回転ばしてくれる」という説明も、ツッコミどころ満載で笑えて良しw
>動きぎこちないころばし屋
故障寸前みたいな動きがなんかかわいいなァ~
…いやいや、仮にもプロですぞ、失言失言(笑)
>転ばされて怯えるジャイアン
一回転ばされたくらいでそこまで震え上がるなんて、そんなオーバーな…
ジャイアンの性格からして、一回やられたら逆上してやり返すと思うんだ。
それでも敵わずに転ばされ、元の話と同じように3回目に腰抜かしてそれでも物投げて反撃、という流れの方が自然ではなかろうか。
でもころばし屋、ちゃんと始終恐ろしそうに演出されてたからそう不自然でもないけどさ。
>被害者続出
被害拡大してる重大事態だってのに、なんていい加減な描写だ!(←誉め言葉
オリジナル部分らしいけど、無関係の周りを巻き込んじゃうのが『ドラえもん』らしくて良いなぁ~
しかし、プロの攻撃をことごとくかわしていくのび太…
何気にスゴいぞ(笑)
>のび太vsころばし屋
突然背景が西部劇化。
しずかちゃんを守ろうとする流れも唐突なら、一騎討ちになる展開も唐突で、話から浮いてる気がする。
おまけにプロに撃ち勝つのび太。
なんつー射撃の腕だッ!(笑)
>迫り来るころばし屋
ラスト周辺の恐怖演出は非常に効果的でいいなぁ
のび太が金積んでも降参する気持ちがよく分かる。
しかし、100円のキャンセル料払うのに躊躇するってのが、話のレベルが低くて面白い。